2026年春、なぜ「網タイツ」が東京のストリートを再定義しているのか?反骨精神からラグジュアリーの象徴へ

2026年春、なぜ「網タイツ」が東京のストリートを再定義しているのか?反骨精神からラグジュアリーの象徴へ

網 タイツが、今まさに東京のファッションシーンを鮮やかに塗り替えている。かつてはパンクカルチャーの反逆心やサブカルチャーのアイコンとして語られることが多かったこのレッグウェアだが、2026年春の路上では、全く異なる文脈で再解釈されている。渋谷のスクランブル交差点を行き交う人々を見渡せば、ミニマルなジャケットに繊細なマイクロメッシュを合わせるスタイルや、あえてワイドパンツの裾から覗かせる計算されたアクセントが目につく。単なる過去のブームの焼き直しではない。ここには、現代の都市生活者が求める自己表現の新しいリアリティが透けて見える。

表参道に店を構える気鋭のセレクトショップでディレクターを務める佐藤みどり氏は、「パリやミランの2026年春夏コレクションでの提案を機に、国内での問い合わせが前年比で200%以上に急増した」と明かす。とりわけ、肌なじみの良いヌードカラーやグラデーション塗装を施した上品な網 タイツは、これまで敬遠しがちだった層にもすんなりと受け入れられた。デニムの破れ目から覗かせる無骨なストリート感と、ドレッシーなシルクワンピースに合わせるエレガンス。その双極を自由に行き来できる柔軟性こそが、今のムードに合致しているのだ。

パンクからクワイエット・ラグジュアリーへ:変貌するデザイン哲学

70年代のロンドンパンクを象徴する粗い網目は、かつて社会への異議申し立てだった。しかし現在のランウェイが提示するのは、極小の網目が織りなす「クワイエット・ラグジュアリー(控えめな贅沢)」の表情だ。

ハイブランドのデザイナーたちは、網目のピッチ(間隔)をミリ単位で微調整し、脚のラインを最も美しく見せる独自の視覚効果を追及している。光の当たり方で陰影が変化するシームレス構造や、シルク糸を混紡したマットな質感。派手さを競う時代は終わり、静かな主張を宿した繊細なテキスタイルがトレンドの中心に躍り出た。

性別の境界を溶かす「ジェンダーレス・メッシュ」の衝撃

2026年のレッグウェア市場において無視できないのが、男性層の急速な拡大である。メンズファッションにおけるショートパンツやクロップドパンツの定着に伴い、レッグラインにアクセントを加える手段としてメッシュ構造が選ばれている。

「男が網目を穿く」という発想は、もはや奇抜なものではない。ストリートブランドからリリースされるメンズ仕様のプロダクトは、腰回りの圧迫感を軽減したリラックスフィットや、スニーカーとの相性を計算した厚手の編み地が特徴だ。性別のフレームを軽やかに飛び越える若者たちにとって、それは単なるテクスチャーの選択肢の一つに過ぎない。

小林 直樹
Penulis

小林 直樹

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。