2026年春、熊本・天草へ。「幻のウニ丼」を巡る環境の激変と、本物の甘みを守り抜く職人たちの情熱

2026年春、熊本・天草へ。「幻のウニ丼」を巡る環境の激変と、本物の甘みを守り抜く職人たちの情熱

天草 うに 丼を求めて、早春の南九州・熊本県天草諸島へと向かう人々が絶えない。特に3月中旬から本格化するムラサキウニの漁期は、島内の割烹や海鮮食堂が一気に活気づく時期だ。素潜り漁師が冷たい海へと潜り手作業で水揚げするウニは、保存料であるミョウバンを一切使わず、殻から割りたての身をご飯に盛る。口に含んだ瞬間に解ける上品な甘みと、鼻を抜ける潮の香りは、一度味わえば他の海鮮丼には戻れなくなると言われるほどの強烈なインパクトを持つ。

しかし、手放しで甘美な食文化に酔いしれてばかりもいられない。近年の地球温暖化に伴う水温上昇や海洋環境の激変は、天草の海にも確実な影を落としている。こうした厳しい自然環境の変容と向き合いながらも、現地で振る舞われる至高の天草 うに 丼は、資源管理を徹底する漁師と、最高の状態で客に届ける料理人たちの密接な連携によって守られ続けている。

春のムラサキウニから夏の赤ウニへ:季節を巡る2つの至高

天草のウニ文化を語る上で欠かせないのが、季節ごとに主役が入れ替わる二大ウニの存在だ。春から初夏にかけて市場を席巻するのは「ムラサキウニ」。クセがなく、繊細な甘みとすっきりとした後味が特徴で、採れたての爽快感をストレートに味わえる。

一方、7月後半から秋口にかけて旬を迎えるのが「赤ウニ」だ。地元でも「幻」と称されるこの赤ウニは、水揚げ量が極めて少なく、市場に出回ることは稀。濃厚なコクと強い旨味、舌の上でとろけるようなテクスチャーを持ち、グルメたちの間では一度は食べるべき逸品として語り継がれている。季節を変えて何度も足を運ぶリピーターが多いのも、この明確な旬の違いがあるからだ。

海水温上昇と「磯焼け」の脅威:2026年の天草の海で起きていること

2026年現在、天草の海は大きな岐路に立たされている。九州西岸でも顕著になっている海水温の上昇は、海底の海藻類が枯死する「磯焼け」を深刻化させた。ウニの主食であるアラメやカジメといった海藻が減れば、ウニの身入りは著しく悪化する。

10年前と比べて、身の詰まった上質なウニを探すのが明らかに難しくなったと地元漁師は明かす。漁獲量の減少は価格の上昇を招き、天草全体での資源保護意識をかつてないほど高めるきっかけとなった。無計画な乱獲を防ぎ、ウニが育つ藻場をいかに再生させるか。海鮮丼一杯の背景には、環境保護に向けた地域ぐるみの切実なドラマが存在する。

阿部 裕樹
Penulis

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。