弐 萬 圓 堂という屋号を聞いて、昭和から平成のテレビ画面を彩ったあのフレーズを思い出す人は少なくないはずだ。「追加料金なし、2万円均一」という一律価格で当時のメガネ業界に激震を与えた存在である。2026年、相次ぐ原材料高と記録的な物価上昇の波が押し寄せる中、日本の眼鏡市場は再び大きな曲がり角を迎えている。
安さを極限まで追求するファストメガネの全盛期を経て、消費者の眼差しは「単なる低価格」から「確かな費用対効果」へと明らかにシフトし始めた。そうした市場の構造変化に伴い、かつての弐 萬 圓 堂が提示した「分かりやすいパッケージ価格と品質の高度な両立」という思想が、現代の小売現場で新しい意味を持って語り直されている。
「レンズ込み2万円」の衝撃から四半世紀、メガネ業界に再び起きている異変
1990年代後半から2000年代初頭、日本のメガネ市場は「高額な専門店の高級品」か「ノーブランドの粗悪品」かという二極化の渦中にあった。そこに風穴を開けたのが、フレームと標準レンズをセットにして2万円で提供する明朗会計のモデルだった。薄型レンズにすると価格が倍跳ね上がるのが当たり前だった時代において、この分かりやすさは消費者の心を掴んだ。
時代は下り、2026年。5,000円前後の超低価格チェーンが街を席巻した時代は過去のものとなりつつある。今、店頭で顧客が口にするのは、低価格フレームの耐久性不足や、複雑な視力補正を行った際に生じる不透明な追加費用への疑問だ。市場の振り子が、再び逆方向へ大きく振れ始めている。
低価格競争の果てに消費者が求めた「ちょうどいい贅沢」
都内のメガネスーパーや大手チェーンの店頭を観察すると、顧客の年齢層と購買動機に明確な変化が見て取れる。使い捨て感覚で安いメガネを数本回す生活から、掛け心地が良く壊れにくい一本を納得感のある価格で買い、長く愛用するスタイルへの転換だ。
「数千円のメガネを頻繁に買い替える労力よりも、2万円前後の予算で視力測定からフィッティングまでしっかり面倒を見てくれる店舗を選びたい。そう考える30代から50代が急速に増えています」。眼鏡産業に詳しい流通アナリストの佐藤昌彦氏はそう分析する。安売り合戦をくぐり抜けた業界が今直面しているのは、単なる値引きではなく、アフターケアを含めたトータルの「買い物の納得感」なのだ。