モロッコ インゲンが、今、空前の売れ行きを見せている。スーパーの野菜売り場で目立ち始めたかと思えば、都内の高感度ビストロや居酒屋の黒板メニューを瞬く間に占拠。かつて煮物の「添え物」程度に思われていた平べったい緑の鞘(さや)が、2026年の物価高と時短志向、さらには健康ブームの波に乗り、食卓の主役に躍り出た。
物価高騰が続く中で消費者が求めたのは、無駄なく食べられて調理の手間がかからない「タイパ(タイムパフォーマンス)」に優れた食材だ。実はこのモロッコ インゲン、一般的な丸インゲンと違って厄介な筋取りがほぼ不要で、火の通りも驚くほど早い。都内大手スーパーの購買データによると、今年に入ってからの売上は前年同期比で180%を突破。単なる一過性のトレンドを超えた地殻変動が起きている。
1. 猛暑を乗り切る救世主? 国内産地で起きている地殻変動
「今年の夏は本当に厳しかったが、この豆だけは力強く育ってくれた」。高知県の農園で長年野菜を作るベテラン農家は、ハウスの中でそう胸を張る。気候変動による連日の猛暑で多くの葉物野菜が壊滅的な打撃を受ける中、病害虫に強く生育スピードが早い平インゲンは、農家にとっても頼みの綱だ。
2026年現在、スマート農業の導入により、これまで秋口が中心だった出荷時期の通年化が実現しつつある。供給が安定したことで、価格の乱高下が激しい他の緑黄色野菜の代替品として、卸売市場での評価が急上昇しているのだ。
2. 下処理ゼロ&廃棄率ほぼゼロ。現代人が平インゲンに飛びつくワケ
キッチンに立つ人間にとって、インゲンの筋取りほど地味で面倒な作業はない。包丁で端を落とし、スーッと筋を引く。あの時間を苦痛に感じていた層に、平さやの形状は劇的なソリューションをもたらした。
肉厚でありながら柔らかく、端をサッと落として切るだけ。ゴミもほとんど出ない。共働き世帯や単身層にとって、「買った状態から数分で食卓に出せる」という事実は、何物にも代えがたいメリットだ。タイパを重視する若い世代のハートを力強く掴んだ要因はここにある。