越後 交通は、新潟県中越地方を中心とした市民の「足」として長年地域を支え続けてきたが、2026年現在、少子高齢化や深刻な運転手不足という荒波の中で急激な変革期を迎えている。長岡市や柏崎市などを網羅する広大な路線網をいかに維持し、次世代へつなぐのか。現場では今、従来の路線バスの常識を覆すリアルな模索が続いている。
地方都市における移動手段の縮小が全国的なニュースとなる中、越後 交通が推し進めるタッチ決済の拡充やAIオンデマンド運行の導入は、周辺自治体からも大きな関心を集めている。過疎化が進む沿線地域で乗客の利便性と運行効率をどう両立させるのか。取材を進めると、単なる交通事業者の枠を超えた、地域経済の生命線を守るための切実な舞台裏が見えてきた。
運転手不足の波紋と「2026年問題」通過後のリアル
2026年4月に適用された時間外労働の上限規制から2年が経過した。路線維持への影響は今なお尾を引いている。減便や一部区間の廃止を余儀なくされた路線がある一方で、既存のダイヤをどう組み替えるかという現場の苦悩は絶えない。
「朝の通学ラッシュ帯を維持するために、昼間の運行本数を削らざるを得ないケースもある」。現場の運行管理者はそう漏らす。求人広告を出しても応募は限られ、ベテランドライバーの定年退職が毎年押し寄せる。単に車体を走らせるだけでなく、いかに限られた人手で網の目のような路線網を維持するかという数学的なパズルに、日々直面しているのが実情だ。
交通系IC・タッチ決済の全域導入で変わる乗車体験
かつて整理券と現金小銭が当たり前だった乗車風景も、ここ1〜2年で劇的に塗り替わった。クレジットカードのタッチ決済や主要交通系ICカードの利用範囲拡大により、乗客の利便性は飛躍的に向上している。
特に高速バス路線や長岡駅を発着する主要路線でのスムーズな乗降は、朝夕の遅延防止にも一役買っている。観光客や出張で訪れるビジネス客にとっても、「小銭を用意する手間」から解放された意味は大きい。デジタル化への投資は決して小さくないが、改札業務の効率化とデータの可視化という観点から、長期的なメリットを生み出し始めている。