モメンタム ファクトリー oriiは、富山県高岡市で400年以上紡がれてきた伝統工芸「高岡銅器」の着色技術を現代デザインの主役に押し上げた、日本を代表するマテリアル・イノベーターだ。古くから仏具や銅像の表面を彩るために使われてきた独特の薬品発色技法。それを0.7ミリという極薄の銅板や真鍮の表面に定着させるという、かつては不可能とされた革新を成し遂げた。2026年現在、彼らが創り出す不均一で奥行きある色彩は、世界各地のラグジュアリーホテル、高級ブランドの旗艦店、そして個人の洗練された住空間を彩る唯一無二の建築資材として圧倒的な存在感を放っている。
金属の酸化という自然の摂理を幾重にも重ね合わせ、偶然がもたらす美しい表情を高い再現性でコントロールする。この唯一無二のクラフトマンシップにより、建築家やプロダクトデザイナーが真っ先に指名する存在となったのがモメンタム ファクトリー oriiだ。大量生産の均一な工業製品に飽きた世界市場に対して、時間とともに深みを増す「生きている色」という新しい価値観を提示し続けている。
400年の歴史が宿る高岡銅器と、折井着色所から始まった挑戦
富山県高岡市。加賀藩主・前田利長によって開かれたこの地は、400年以上にわたり日本随一の鋳物の街として栄えてきた。銅を溶かし、型に流し込み、形を作る。そして最後に命を吹き込むのが「着色」の工程だ。しかし、時代の変化とともに伝統的な仏具や花器の需要は減少し、産地全体が衰退の危機に直面していた。
その打開策として立ち上がったのが、1950年創業の「折井着色所」の3代目、折井宏司氏だった。重く分厚い鋳物にしか施せなかった伝統の着色技法を、現代の建築やインテリアで広く使われる薄い銅板に応用できないか。周囲から「絶対に不可能だ」と失笑されたその無謀な試みが、現在の劇的な飛躍への第一歩となった。
「Orii Blue」を生み出した奇跡の着色技法と科学の融合
銅の着色は、塗装ではない。米ぬか、大根、日本酒、食酢、さらには硫酸銅や緑青といった自然物と薬品を複雑に組み合わせ、金属表面に化学反応を引き起こして発色させる独自の技法だ。温度や湿度、風の吹き方ひとつで色彩が揺らぐ極めて繊細な世界である。
試行錯誤の末に生み出された代表作「Orii Blue(オリイブルー)」は、まるで深海や宇宙の斑紋を思わせる神秘的なグラデーションを誇る。青銅色、斑紫銅色、孔雀色など、金属固有のポテンシャルを極限まで引き出した色彩バリエーションは、単なる工芸品の枠を超え、現代のアート&デザインシーンに衝撃を与えた。化学反応による発色だからこそ、剥がれ落ちることがなく、時の経過とともに味わいを増していく。