草摩紅野の呪いはなぜ解けたのか?魚谷ありさとの愛と慊人との歪な絆

草摩紅野の呪いはなぜ解けたのか?魚谷ありさとの愛と慊人との歪な絆

フルーツ バスケット くれ の物語において、最も切なく、そして静かな救いをもたらす存在といえば、鳥の物の怪(酉)を宿していた草摩紅野だろう。高屋奈月が描いた伝説的な少女漫画を原作とし、現在もNetflixやAmazon Prime Videoといった主要配信サービスで世界中のファンを獲得し続ける『フルーツバスケット』。その群像劇の中でも、紅野が背負った宿命は異彩を放っている。

白泉社の連載開始から長い年月が経ち、TMSエンタテインメントによって制作されたアニメ『フルーツバスケット The Final』で完結を迎えた今なお、ファンを惹きつけてやまないのがフルーツ バスケット くれ の数奇な運命だ。なぜ彼の呪いだけが、物語の始まる遥か前に解けていたのか。そして、なぜ彼はその事実を隠し、草摩慊人の側に留まり続けたのか。鳥の物の怪の秘密や魚谷ありさとの運命的な出会いを含め、その真相と今日的な価値を探る。

鳥の物の怪の秘密:なぜ草摩紅野の呪いは最初に解けたのか?

十二支の呪いとは、神と物の怪たちの間に結ばれた「永遠の絆」という名の束縛だ。しかし、草摩紅野の身に起きた現象は、その絶対的な法則の崩壊を告げる最初の予兆だった。彼が高校生の頃、理由も前触れもなく、ただ唐突に鳥(酉)の物の怪は彼を去っていった。

この呪いが解けた本質的な理由は、十二支の絆そのものが寿命を迎え、風化し始めていたからに他ならない。神と十二支の約束はあまりにも長い時を経て、変質し、形骸化していた。空を飛ぶ鳥の物の怪が真っ先に彼から離れたことは、束縛からの解放を象徴すると同時に、神である慊人との繋がりが壊れ始めた証拠でもあった。

だが、羽を失った鳥は、自由を得たと同時に深い孤独へと突き落とされる。自由になったはずの紅野が、自由を享受することなく草摩の奥深くに閉じこもる道を選んだのは、皮肉というほかはない。

草摩慊人との歪な絆:優しさが生んだ狂気と自己犠牲

呪いが解けた瞬間、紅野が目撃したのは、神としての万能感を失い、見捨てられる恐怖に泣き叫ぶ幼き日の草摩慊人の姿だった。自分が去れば慊人は完全に壊れてしまう。そう直感した紅野は、自らの意思で「慊人の側で生きる」という籠の中の生を選択する。

ここにあるのは、神と十二支の絆ではない。純粋すぎる憐れみと、自己犠牲的な情愛だ。慊人が自らを女性であることを隠し、狂気に身を委ねていく過程で、紅野はそのすべてを受け止める「止まり木」となった。だが、その優しさは結果として慊人の執着を加速させ、彼女を孤立させる歪んだ共依存関係を生み出してしまう。

鳥の呪いから解放されながらも、心は誰よりも強く縛られ続けていた。紅野の沈黙と献身は、草摩家に渦巻く闇を深める刃でもあったのだ。

阿部 裕樹
Penulis

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。