「貯金1億円でも不安」2026年の日本を蝕む新たな病理と、私たちが失った決定的なもの
お金 に 執着 する 人が、かつてないほど日本社会で急増している。長引く物価高騰と実質賃金の低迷、そしてSNSによる絶え間ない「他者との比較」が、人々の精神を静かに摩耗させているのだ。かつては美徳とされた「節約」や「将来への備え」は、いつの間にか、終わりなき強迫観念へと姿を変えてしまった。
都内の大手メーカーに勤務する佐藤健太さん(仮名・38歳)は、客観的に見れば十分な高年収を得ている。しかし、いつの間にかお金 に 執着 する 人と同じ思考パターンに陥っている自分に気づき、愕然としたという。「コンビニでペットボトルのお茶を買うだけで罪悪感がある。残高が増えても、全く安心できないんです」と彼は告白する。
2026年、日本を襲う「新・生存不安」の正体
なぜ、これほどまでに私たちは「数字」に追われるようになったのか。2026年現在、日本経済は緩やかなインフレ基調にある。かつての「デフレで物価が上がらない国」という前提は崩れ去り、何もしなければ資産が目減りしていくという現実が、人々の焦燥感を煽る。
老後資金2000万円問題は過去の話となり、今や「5000万円でも足りない」という言説がメディアを飛び交う。この不確実な未来への恐怖が、人々の防衛本能を過剰に刺激しているのだ。貯めることが目的化し、使うことが恐怖になる。この歪んだサイクルが、社会全体を覆っている。
「持てる者」ほど飢えている? 資産1億円でも消えない渇き
興味深いことに、この不安は低所得層だけのものではない。むしろ、一定以上の資産を持つ富裕層や準富裕層ほど、金銭への執着を強める傾向があるという。
精神科医の分析によれば、資産が増えれば増えるほど、「これを失ったらどうなるか」という喪失への恐怖が肥大化する。1000万円持っている人は1億円を目指し、1億円に達した人は3億円なければ安心できない。ゴールポストは常に動き続け、永遠に満たされることはない。これは経済的な問題ではなく、純粋に心理的な「飢え」なのだ。