ドレミの歌誕生秘話と原曲の真実!ペギー葉山が込めた驚きの訳詞

ドレミの歌誕生秘話と原曲の真実!ペギー葉山が込めた驚きの訳詞

保育園や幼稚園の手遊びから小学校の音楽の授業、ピアノ教室の入門レッスンに至るまで、日本人の誰もが一度は口ずさんだ経験を持つ国民的名曲「ドレミの歌」。1959年のミュージカル初演、そして1965年公開の映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌として世界中に広まったこの楽曲だが、私たちが親しんでいる「ドはドーナツのド」というフレーズは、英語の原曲を直訳したものではなく、歌手のペギー葉山氏が独自の感性と情熱で紡ぎ出した完全な創作訳詞である。

原曲の英語詞はどのような内容で、なぜ日本版ではドーナツやレモンといった日常の親しみやすい言葉へと置き換えられたのか。半世紀以上にわたり世代を超えて歌い継がれる背景には、当時の制作現場における知られざる葛藤と、緻密に計算された教育的・心理的アプローチが存在していた。当時の手記や証言、音響心理学の観点を交えながら、その全貌を徹底的に解き明かす。

📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
  • 要点1:「ドはドーナツ」の歌詞は、歌手のペギー葉山氏がNHK『みんなのうた』の収録直前、喫茶店で苦悩の末にひらめいた独自の創作訳詞である。
  • 要点2:英語の原曲歌詞は「Doe(雌鹿)」「Ray(太陽光線)」など自然や抽象概念を扱っており、日本語版とは言葉遊びの構造が根本から異なる。
  • 要点3:幼児の五感(味覚・視覚・身体動作)と音階を結びつける卓越した言語設計が、2026年現在も保育・音楽教育の現場で最高峰の教材として機能している。

【誕生秘話】「ドはドーナツ」が生まれた喫茶店の奇跡とペギー葉山の苦闘

1960年代初頭、日本に「ドレミの歌」を持ち込み、自ら日本語詞を手掛けたのがジャズ・ポップス歌手として第一線で活躍していたペギー葉山氏(1933–2017)である。彼女がブロードウェイで上演されていたミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』を現地で観劇した際、「この素晴らしいメロディを日本の未来を担う子どもたちに届けたい」と強く胸を打たれたことがすべての発端だった。

その後、1962年6月〜7月にNHK『みんなのうた』での放送が決定し、ペギー氏自身が訳詞を担当することになった。しかし、当初用意された英語の直訳に近い歌詞は、「鹿」「光線」といった観念的な単語が多く、日本の子どもたちの生活実感とはあまりにもかけ離れていた。「このままでは子どもたちが楽しそうに歌う姿が想像できない」と強い危機感を抱いた彼女は、締め切り直前まで原稿用紙を前に頭を抱え続けた。

突破口が開かれたのは、東京・有楽町の喫茶店での出来事だった。生前の特番インタビューや自著の手記において、ペギー氏は当時の切迫した心境を次のように述懐している。

「明日が録音という追い詰められた状況の中、喫茶店で机に突っ伏しながら『ド、ド、ド……』と考えあぐねていました。そのとき、目の前に運ばれてきたのが、たまたま注文していた穴のあいたドーナツだったのです。『これだ! ドはドーナツのドだ!』と閃いた瞬間、視界が一気に開けました」

ドーナツという子どもが大好きな食べ物から始まった着想は、瞬く間に「レはレモンのレ」「ミはミカン(当初はミルクの案もあった)のミ」へと連鎖していった。さらに「ファ」の言葉が見つからず苦悩した際には、自らを奮い立たせる意味を込めて「ファイト」という前向きな言葉を当てはめた。この直感的なひらめきと、子どもたちへの深い愛情こそが、半世紀以上愛される国民的フレーズを生み出した決定打となった。

原曲と日本語版の決定的な違い|英語歌詞の本当の意味と音階の役割

『サウンド・オブ・ミュージック』におけるリチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタイン2世作詞による英語の原曲は、イタリア音名(Do, Re, Mi, Fa, Sol, La, Ti)と同音の英単語を掛け合わせた高度な言葉遊び(Puns)によって構成されている。

原曲の歌詞とペギー葉山氏による日本語訳詞を対比させると、その構造的なアプローチの違いが浮き彫りになる。

音階英語原曲のフレーズと意味日本語版(ペギー葉山訳)編集部の構造分析・教育的特徴Do(ド)Doe, a deer, a female deer
(ドゥ=雌鹿のこと)ドはドーナツのド視覚・味覚に直結する食べ物を採用し、親しみやすさを最大化Re(レ)Ray, a drop of golden sun
(レイ=金色に輝く太陽の光線)レはレモンのレ「黄色・酸味」の具体的な感覚像を喚起させる名詞を選択Mi(ミ)Me, a name I call myself
(ミー=私自身を呼ぶ名前)ミはみんなのミ原曲の「私(個人)」から「みんな(集団・調和)」へ価値観を転換Fa(ファ)Far, a long, long way to run
(ファー=遠くへ走る道のり)ファはファイトのファ動的な応援概念を導入。声を発する際のエネルギッシュな発声を促すSol(ソ)Sew, a needle pulling thread
(ソウ=針で糸を縫うこと)ソはあおいそら頭文字ではなく語中の「そ」を抽出。広がりを感じる情景描写へ昇華La(ラ)La, a note to follow Sew
(ソの次に続く音符)ラはラッパのラ原曲が言葉遊びを諦めた箇所に楽器名を当て、音の楽しさを強調Ti/Si(シ)Tea, a drink with jam and bread
(ティー=ジャムパンと楽しむお茶)シはしあわせよ音階の終着点として情緒的充足感(幸せ)を提示し、歌全体の結びとする

英語圏では「Do-Re-Mi」の母音と英単語の発音の一致を重視したのに対し、日本語版では子どもの情緒的発達と生活実感を最優先した構成となっている。特に「ミ=みんな」「シ=しあわせ」という配置は、歌う者同士の連帯感と幸福感を高める心理的仕掛けとして極めて秀逸である。

斉藤 蓮
Penulis

斉藤 蓮

シンプルで洗練された住まいづくりとインテリアコーディネートのアイデアを提案しています。