新 倉山 浅間 公園は、世界中の旅行者が「日本の象徴」として思い描くあの絶景の真ん中に立ち続けている。雄大な富士山の前にそびえ立つ朱色の五重塔(忠霊塔)。SNSや海外旅番組で幾度となく拡散されたその構図は、世界中のツーリストを富士吉田の街へと惹きつけてやまない。だが、2026年の今、この場所を訪れた旅行者が目にするのは、かつての混沌とした混雑風景ではない。
過剰な観光客の殺到に長年頭を悩ませてきた地元自治体が、いよいよ本格的な人流制御とデジタル予約システムへ舵を切ったからだ。静寂を取り戻した新 倉山 浅間 公園の展望デッキでは、かつての殺伐とした場所取り合戦が姿を消し、訪れる人々が本来の風光明媚な景観とじっくり向き合える環境が整いつつある。持続可能な観光地へと変貌を遂げつつある現地のリアルな最新状況を、現地での取材結果とともにレポートする。
2026年導入の事前予約制とスマート人流制御:何が変わったのか
朝6時前、まだ薄暗い下吉田の街に冷ややかな風が吹き抜ける。かつてなら、この時間帯からカメラを抱えた観光客が展望デッキを目指して我先にと押し寄せていた。しかし、2026年春から全面導入された「タイムスロット型エリア入場制」により、かつての無秩序な大混雑は一変した。
現在、桜の開花時期や秋の紅葉シーズンといった最繁忙期には、専用アプリを通じた完全事前予約枠が設けられている。1時間あたりの入場人数を厳密に上限設定することで、階段での滞留や展望台周辺での危険なすし詰め状態を防止。スマートフォンのQRコードを提示するだけでスムーズに入場できる仕組みが機能しており、訪問者の満足度は飛躍的に向上した。
397段の「咲くや姫階段」を攻略する身体的リアリティ
この公園のハイライトである展望台に辿り着くには、避けて通れない試練がある。それが397段の石段「咲くや姫階段」だ。息が切れ、太ももがかすかに震え始める頃、周囲の木々の隙間から富士山の白い峰が顔を覗かせる。
階段の途中には数多くのベンチと休憩スペースが増設された。足腰に不安のある高齢者や小さな子どもを連れたファミリーでも、自分のペースで登れる配慮がなされている。また、車いすユーザーや歩行が困難な来訪者向けには、予約制の低公害電動スロープカーの運行テストも進んでおり、インクルーシブな観光地としての成熟が見て取れる。