世界中の教会やコンサートホール、そして困難に直面した人々の祈りの場で歌い継がれてきた名曲「God will make a way」。キリスト教のワーシップソング(現代賛美歌)の枠を超え、多くの人々の涙と再生に寄り添い続けるこの曲には、作者自身の想像を絶する喪失体験と、そこから紡ぎ出された深い祈りが刻まれています。
「道がないと思える場所にも、神は必ず道を拓いてくださる」――そのシンプルで力強いフレーズは、どのような状況下で生まれたのでしょうか。楽曲の原点となった痛切な出来事から歌詞の深い意味、そして作者ドン・モーエンの歩みまで、その真実に迫ります。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:世界的名曲「God will make a way」は、作者の親族を襲った凄惨な交通事故の悲劇と深い悲嘆の中で生み出された。
- 要点2:旧約聖書イザヤ書の「荒野に道を、砂漠に川を」という約束を背景に、絶望の淵にある魂へ向けた慰めと希望が歌われている。
- 要点3:日本語訳「主が道を拓かれる」としても広く浸透し、世代や宗派を超えて今なお多くの人々に生きる力を与え続けている。
【誕生秘話】悲痛な事故の絶望から生まれた「God will make a way」の背景
この楽曲が生まれたきっかけは、1986年の深夜にかかってきた一本の電話でした。シンガーソングライターでありワーシップリーダーのドン・モーエン(Don Moen)のもとに、妻の妹一家が休暇中のドライブで壊滅的な交通事故に巻き込まれたという凶報が飛び込んできたのです。
大型トラックとの衝突により、乗っていた4人の幼い甥たちのうち、8歳だった長男のジェレミーが即死。残された3人の息子たちも頸椎骨折などの重傷を負い、下半身不随になるという痛ましい事態に見舞われました。あまりにも突然で過酷な現実に、家族全員が言葉を失い、深い暗闇と絶望に突き落とされた瞬間でした。
葬儀に向かう飛行機の中で、ドン・モーエンは「遺族にどんな言葉をかければいいのか」「これほどの悲惨な出来事の前に、音楽家として何ができるのか」と思い悩み、神に必死に祈りを捧げました。そのとき彼の心に強く響いたのが、旧約聖書の『イザヤ書』43章19節の御言葉でした。
「見よ、わたしは新しい事をする。(中略)荒野に道を、砂漠に川を設ける」――この聖句に触れた瞬間、機内でペンを走らせて完成させたのが、「God will make a way(主が道を拓かれる)」のメロディと歌詞でした。誰かを励まそうと計算して書いた曲ではなく、底知れぬ悲しみの中にいる愛する家族へ、ただ神の真実と希望を届けるために捧げられた切実な祈りだったのです。
【歌詞の意味と和訳】「道なき場所に」響く希望と聖書のメッセージ
楽曲の核を成すメッセージは、人間の目には八方塞がりに見える状況であっても、神の働きは人間の知恵や視界を超えているという信仰の確信です。
サビの歌詞と日本語訳の対比を見ると、そのストレートなメッセージ性が胸に迫ります。
【サビの英語歌詞と和訳】
God will make a way
Where there seems to be no way
He works in ways we cannot see
He will make a way for me
(神は道を拓いてくださる / まったく道がないと思えるその場所に / 私たちの目には見えない方法で働き / 私のために道を造り出してくださる)
He will be my guide
Hold me closely to His side
With love and strength for each new day
He will make a way, He will make a way
(神は私の導き手となり / その御腕で固く抱き寄せてくださる / 新しい一日ごとの愛と力をもって / 必ず道を拓いてくださる)
続くヴァース部分では、「荒野の中に道が敷かれ、砂漠に川が流れるのを見るだろう。天と地は滅び去ろうとも、主の言葉は永遠に残る」と歌われます。この楽曲が持つキリスト教賛美歌としての本質は、単なる楽観主義ではなく、「最も暗い谷底においても神は共に歩まれる」という不変の約束に基づいている点にあります。