大相撲中継やスポーツニュースで日常的に耳にする「関取(せきとり)」という言葉。相撲部屋に所属するすべての力士を指す一般的な愛称と思われがちですが、大相撲の世界における「関取」の定義は極めて厳格であり、角界の身分制度における絶対的な境界線として機能しています。
大相撲には約600名を超える力士が在籍していますが、その中で関取と呼ばれる座を掴み取れるのはわずか70人(全体の約1割強)に過ぎません。本稿では、力士と関取の決定的な違いをはじめ、十両・幕内への昇進条件、幕下以下との天と地ほど異なる給料・年収格差、さらには付き人や化粧まわしといった驚くべき特権待遇の裏側まで、現場の証言や公式データをもとに徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:関取とは大相撲の階級で「十両(十枚目)」以上の力士を指し、総勢約600人の中でわずか70人(幕内42人・十両28人)のみに許されたプロ中のプロの称号。
- 要点2:幕下以下が無給(養成手当・場所手当のみ)であるのに対し、関取に昇進した瞬間から日本相撲協会より正規の月給(十両で月額110万円〜)が支給され、年収1,000万円超のプロフェッショナルとなる。
- 要点3:専用の個室付与、付き人(身の回りの世話係)の配置、移動時のグリーン車利用、化粧まわしを締めての土俵入りなど、生活・待遇面において劇的な特権が与えられる。
【基本定義】関取とはどこから?力士との決定的な違いと語源の由来
大相撲の世界において、「力士(相撲取り)」と「関取」は似ているようで全く異なる概念です。結論から言えば、関取とは大相撲の番付(階級)において「十両(正式名称:十枚目)」以上の地位にある力士を指します。
日本相撲協会に所属し、前相撲を取って番付に四股名(しこな)が載っている者は全員「力士」ですが、そのうち関取と呼ばれるのは十両と幕内(前頭・小結・関脇・大関・横綱)に属する者だけです。幕下以下の力士は「力士養成員(取的=とりてき)」と呼ばれ、相撲界ではまだ一人前とは認められません。
関取の定員はわずか「70人」という狭き門
大相撲の番付編成において、関取の定員は厳格に固定されています。
- 幕内(まくのうち):42人(横綱、大関、関脇、小結、前頭)
- 十両(じゅうりょう):28人
- 関取の総定員:合計70人
本場所ごとに引退や昇降格による若干の番付変動はあるものの、関取の枠そのものは70席限定のプラチナシートです。新弟子検査をパスして入門した力士の大半が、一度もこの70人枠に入ることなく引退していくのが角界の厳しい現実となっています。
「関取」という言葉の語源・由来とは
「関取」という呼称の語源には、江戸時代の相撲文化に由来する複数の説が存在します。相撲史の記録や関係者の伝承において最も有力とされるのが、「天下の関所を自由に通行できた」という説です。
江戸時代の日本には各地に厳しい関所が設けられており、庶民の通行には厳しい通行手形が必要でした。しかし、大名お抱えの名高い強豪力士は、その威風堂々たる体躯と四股名の名声によって、関所を手形なし(あるいは関所を顔パス)で「関所を取る(関所を自由に乗り越えて通る)」ことが許されていたと伝えられています。
また、「関(せき)」には「関所のように立ちふさがる強敵」「他者を寄せ付けない強者」という意味もあり、技量と風格を備えた一握りの選ばれし強者を「関取」と呼んで敬意を払ったことが定着の契機となりました。
【2026年最新】大相撲の階級表と関取・幕下以下の待遇比較データ
大相撲の階級は全部で10段階に分かれています。このピラミッド構造の中で、十両と幕下の間に引かれた境界線こそが、人生を分ける巨大な分岐点です。
十両への大相撲昇進条件とは
幕下から関取(十両)へと昇進するための条件は、極めて明確かつ過酷です。幕下の番付上位(いわゆる幕下一桁台から幕下15枚目以内)で本場所(年6場所・各場所7番勝負)を戦い、勝ち越し(4勝以上)を重ねることが絶対条件となります。
特に「幕下筆頭(1枚目)」や「幕下2枚目」で4勝3敗以上の勝ち越しを決めれば、十両からの陥落力士との兼ね合いを考慮した番付編成会議を経て、ほぼ確実に十両昇進(新十両)が決定します。十両昇進が決まった瞬間、日本相撲協会から部屋へ正式な昇進伝達の電話が入り、力士は晴れて「関取」としての栄誉を手に入れます。