街のいたる場所やストリーミングサービスで耳にしない日はないほど、平成から令和への転換期を象徴するアンセムとなったOfficial髭男dismの代表曲『Pretender』。「グッバイ」というあまりにも切なく鮮烈なフレーズは広く知られていますが、「どの作品の主題歌だったのか」「ドラマ版と映画版のどちらだったか」と、タイアップの経緯を改めて確認したいと考えるリスナーは後を絶ちません。
結論から明かすと、本作は長澤まさみ主演の大ヒット映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』(2019年5月公開)の主題歌として書き下ろされた記念碑的ナンバーです。映画の壮大な騙し合いと切ない恋愛模様に完璧に寄り添い、バンドを国民的トップアーティストへと押し上げる決定打となりました。本稿では、フロントマン藤原聡が明かした壮絶な楽曲制作秘話から台湾ロケMVの裏側、歌詞に秘められた深層心理の構造まで、現場の記録と客観的データをもとに解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:Official髭男dismの『Pretender』は、長澤まさみ主演の劇場版第1作『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』の主題歌として制作された。
- 要点2:プロデューサーからの差し戻し(ボツ)を経て締め切り寸前に生み出され、台湾ロケによるノスタルジックなMVと共に爆発的な支持を獲得。
- 要点3:Billboard JAPANにおけるストリーミング累計再生回数は10億回を突破し、2026年現在も日本の音楽史に燦然と輝くマスターピースとして定着している。
映画『コンフィデンスマンJP』を彩った名曲|Pretenderと作品の蜜月関係
フジテレビ系列の月9ドラマ枠で2018年に放送された『コンフィデンスマンJP』。その主題歌にインディーズ時代のOfficial髭男dismが手がけた『ノーダウト』が抜擢された出来事は、音楽業界とドラマ界の双方に大きな衝撃を与えました。インディーズアーティストによる月9主題歌の担当は史上初の快挙であり、この強力なタッグが映画版へと引き継がれることになります。
2019年5月に公開された映画第1作『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』の主題歌として誕生したのが『Pretender』でした。香港を舞台に、長澤まさみ演じる信用詐欺師・ダー子と、三浦春馬演じる天才恋愛詐欺師・ジェシー、そして東出昌大演じるボクちゃんらが繰り広げる騙し合いを描いた本作において、楽曲は単なるエンディング曲の枠を越え、登場人物たちの「嘘と本音」が交錯する切ないロマンスの象徴として物語の情緒を極限まで引き上げました。
劇中で描かれる「真実か偽物か分からない恋心」と、楽曲が歌い上げる「もっと違う設定で もっと違う関係で 出会える世界線 選べたらよかった」という叶わぬ願い。映画のストーリーラインと歌詞の世界観が見事な調和を見せたことで、映画の興行収入約29.7億円という大ヒットを力強く牽引しました。
「一度ボツになった」藤原聡が明かす楽曲制作秘話と台湾MVの舞台裏
今やJ-POPの金字塔となった『Pretender』ですが、その誕生過程は平坦ではありませんでした。当時の特番インタビューや公式インタビューにおいて、ボーカル&ピアノの藤原聡は制作初期に映画制作陣から一度リテイク(差し戻し)を受けた事実を告白しています。
映画プロデューサー陣から提示されたオーダーは「ドラマ版の『ノーダウト』を超える、映画スケールの壮大なラブソング」。最初に提出したデモ音源に対して「髭男ならもっと突き抜けた名曲が書けるはずだ」と期待を込めた再考を促された藤原は、締め切りが目前に迫るスタジオで極限のプレッシャーと向き合いました。追い詰められた中でピアノに向かい、コード進行を練り直す中で突如降りてきたのが、あの「グッバイ」から始まるエモーショナルなサビのメロディと歌詞だったと証言しています。
さらに、楽曲の叙情的な世界観を決定づけたのが台湾・台北市内で撮影されたミュージックビデオ(MV)です。映画の舞台である香港の異国情緒にも通じるロケーションとして選ばれた台湾ロケでは、ネオンが妖しく煌めく「西門町」の夜景や、ビルの屋上に設置された「中華民國」の巨大電飾看板、ローカルな熱気を残す夜市などが舞台となりました。雨に濡れた台北の路地とメンバーの演奏シーンが織りなす湿度感のある映像美は、YouTube公開直後から大きな反響を呼び、アジア圏をはじめとするグローバルなリスナー層の獲得にも大きく寄与しました。