スマホも宇宙ロケットも停止する?世界が争奪戦を繰り広げる「希ガス」の正体と2026年の地政学リスク
希 ガス と は、化学周期表の最も右側に位置するヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンなどの元素グループのことだ。他の物質と極めて反応しにくい「不活性」という性質を持つため、かつては地味な存在と見なされていた。しかし2026年現在、この静かな気体たちが、世界のハイテク産業と宇宙開発の命運を握る最重要資源として急浮上している。
ロシア・ウクライナ情勢の長期化や東アジアの緊張により、半導体露光装置に不可欠なネオンや、次世代ロケットの推進剤となるキセノンの供給網が寸断された。多くの人々が「希 ガス と は単なる理科の教科書に出てくる知識」だと思い込んでいたが、今やそれは国家の安全保障に直結する戦略物資そのものである。
反応しない強み:なぜ「孤高の気体」が求められるのか
希ガスがこれほど重宝される理由は、その「頑固さ」にある。他の元素と結びついて化合物をを作ることがほとんどない。この極めて高い安定性が、超精密なものづくりの現場で不可欠となる。
例えば、熱や化学反応を嫌う半導体の製造プロセスでは、シリコンウェハーの保護膜としてアルゴンが使われる。もしここに酸素や他の気体が混入すれば、ナノレベルの回路は一瞬で破壊されてしまう。妥協を許さないハイテク製品の裏には、常にこの「何もしない気体」の存在があるのだ。
半導体製造の生命線:ネオンとクリプトンが枯渇する日
現代のデジタル社会は、光で回路を描く「露光技術」によって支えられている。ここで使われるエキシマレーザーの光源に欠かせないのがネオンだ。実は、世界の半導体グレードのネオンの大部分は、ウクライナなどの製鉄所の副産物から精製されていた。
供給網が途絶えたことで、半導体メーカーは代替調達先に奔走している。クリプトンも同様だ。メモリ半導体の3次元積層化が進むなか、エッチング工程での需要は爆発的に増えている。空気中にわずかしか存在しないこれらの気体をどう確保するか、メーカーの死活問題となっている。