御陵 駅——京都都市圏の交通網において、これほど異彩を放つ場所が他にあるだろうか。京都市営地下鉄東西線と京阪京津線が分岐・合流するこの地下深くのステーションは、単なる日常の乗り換え拠点という枠を完全に踏み越えている。2026年現在、市内の過熱する混雑をスマートに回避する抜け道として、そして世界的に見ても極めて稀有な鉄道システムの拠点として、国内外のトラベラーからかつてない熱視線を浴びているのだ。
観光客でごった返す京都駅周辺を尻目に、地下鉄と私鉄を賢く乗り継ぐ旅人たちの間で御陵 駅は絶好のハブとして重宝されている。地下4階建ての立体的なトンネル構造を抜けた電車が、わずか数分後には滋賀県大津市の地上に出て路面電車となり、併用軌道(道路の上)を悠々と走る姿はまさに圧巻。交通インフラの面白さと実用性が高度に融合したこの場所には、現代の旅行者が求める「体験」と「快適さ」が詰まっている。
「地下鉄・路面電車・登山電車」が交差する全国唯一の超カオス構造
御陵駅の魅力を語るうえで避けて通れないのが、京阪京津線(800系電車)が見せる驚異の変身劇だ。京都市営地下鉄東西線に乗り入れる地下鉄車両として地下深くをハイスピードで走り抜けたかと思えば、御陵駅を過ぎて地上に出た途端、普通乗用車と並んで車道を走る「路面電車」へと姿を変える。
それだけではない。大津方面へ進む途中の逢坂山越えでは、日本の普通鉄道で屈指の急勾配(61パーミル)を駆け上がる「登山電車」の顔さえ見せる。地下鉄、路面電車、登山鉄道というまったく性質の異なる3つの顔をたった1本の列車が併せ持ち、その分岐点となっているのが御陵駅なのだ。鉄道ファンでなくとも、このドラマチックな景色の移り変わりには誰もが目を見張る。
オーバーツーリズム打破の切り札?2026年、山科エリアに押し寄せる新たな人の流れ
2026年、京都の観光事情は大きな転換期を迎えている。清水寺や金閣寺といった王道ルートの激しい混雑を避け、静けさと深い歴史を求める旅行者が東山の山腹を越えた山科・御陵エリアへと流れ込んでいるのだ。
地下鉄東西線を利用すれば、京都の中心部である烏丸御池や市役所前から御陵駅まではほんの10分程度。そこから琵琶湖畔の大津へ抜けるルートは、劇的な混雑緩和をもたらす「裏ルート」として定着した。混雑に揉まれることなく、京都の深みと滋賀の風光明媚な景観をシームレスに楽しむスタイルが、今まさに新定番となりつつある。