山 くらげが、いま日本の食卓とSNSで異例の再ブレイクを果たしている。シャキシャキでもポリポリでもない、独特の「コリコリ」という強烈な歯ごたえ。かつては居酒屋のお通しや中華珍味の脇役として静かに親しまれてきた乾燥茎レタスだが、2026年に入りTikTokやInstagramでの「咀嚼音(ASMR)」動画をきっかけに若者層へ一気に波及。単なる懐かしいおつまみの枠を超え、空前の食感ブームを牽引する主役に躍り出た。
都内の高級フレンチや話題のヴィーガンカフェでも、この山 くらげをカルパッチョのアクセントやスパイス和えのメイン具材として採用する動きが急速に広がっている。低カロリーかつ豊富な食物繊維を含む栄養面での実力も相まって、ヘルスケア意識の高い現代人のライフスタイルに見事にはまった格好だ。海藻やクラゲではなく「茎レタス」という意外な正体も、若者の知的好奇心を強く刺激している。
ASMR動画が火をつけた「音」のイノベーション
「この音がたまらない」。スマートフォンの画面越しに響く、心地よい高音の咀嚼音。マイクが拾う「カリッ、コリッ」という澄んだ音が、Z世代を中心に中毒的な人気を集めている。きっかけは海外のフード系クリエイターが投稿した短尺動画だった。中国で「貢菜(ゴンツァイ)」と呼ばれるステムレタスの乾燥加工品を味付けして食べる動画が、瞬く間に数百万回再生を記録したのだ。
音を楽しむエンターテインメントとして食を捉える傾向は、ここ数年で完全に定着した。とりわけ湿感のない軽快なサウンドは、脳に直接快感を与える「音覚体験」として若者たちの関心を集める。スーパーの乾物コーナーや輸入食品店では、入荷後すぐに売り切れる現象が相次いでいる。
「居酒屋のお通し」から「主役級食材」への華麗なる変身
かつて山くらげといえば、居酒屋でビールのおつまみとして出される醤油漬けやラー油和えのイメージが強かった。しかし、現在のブームは従来の枠組みを軽々と超えていく。都内のレストランでは、白身魚のポワレに焦がしバターと細切りにした山くらげを添えた一品が話題を呼んでいる。
現場のシェフは「加熱しても失われない独特の食感は、西洋料理のソースと相性が抜群だ」と明かす。エスニック料理の生春巻きに巻いたり、タコスの具材としてライムを絞って味わったりと、素材自体の主張が強すぎないからこそどんな調味料にも染まるフレキシビリティが、新世代の料理人たちを刺激している。