地中海とサハラ砂漠に抱かれた北アフリカの国・チュニジア。この地で毎日の食卓を彩り、国民食として愛され続けているのが「世界最小のパスタ」と称されるクスクスです。日本国内でもエスニック料理の人気が高まるなか、カフェや中東料理店で見かける機会が一気に増えました。
しかし、日本で広く知られているモロッコ風の穏やかで優しいクスクスと、チュニジア本場のクスクスには決定的な違いが存在します。チュニジアのクスクスは、真っ赤なトマトと秘伝の辛味調味料が織りなす「鮮烈な旨辛仕立て」が真骨頂です。知られざるチュニジア風クスクスのディープな魅力から、本場の調理技法、東京で味わえる名店まで余すところなくお届けします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:モロッコ風が黄色くマイルドなのに対し、チュニジアのクスクスはトマトと唐辛子ペースト「ハリッサ」を効かせた情熱的な赤い旨辛スープが特徴。
- 要点2:伝統の二段蒸し器「クスクシエ」を使い、下段で煮込む肉や魚の旨味蒸気で上段の粒を蒸し上げる調理法が、ユネスコ無形文化遺産にも認められた美味しさの根源。
- 要点3:定番のラム肉煮込みだけでなく地中海沿岸の「魚のクスクス」も絶品で、都内の本格レストランでも熱狂的な支持を集めている。
【モロッコ風との違い】チュニジアのクスクスが「赤く辛い」決定的な理由
日本で「クスクス」と聞くと、タジン鍋で蒸し煮にした野菜のスープを添える、黄色や淡い色合いのモロッコスタイルを思い浮かべる方が多いかもしれません。モロッコではサフランやターメリック、シナモンを用いて素材の甘みを引き出しますが、チュニジアのクスクスは見た目からして鮮烈な赤色を放っています。
チュニジアスタイル最大の特徴は、たっぷりのトマトペーストと特産の唐辛子をベースにスープを仕立て、さらに蒸し上がったクスクスの粒自体にスープをたっぷりと吸わせて全体を赤く染め上げることです。辛さの中にも野菜や肉の濃厚な出汁が凝縮されており、一口食べるごとに奥深いコクが押し寄せます。
北アフリカのクスクス文化は2026年にユネスコ無形文化遺産へ登録されました。その共同申請国(チュニジア、モロッコ、アルジェリア、モーリタニア)の中でも、チュニジアのクスクスは突出してスパイシーかつパンチのある味わいとして独自の地位を確立しています。
チュニジア料理の魂!万能調味料「ハリッサ」の奥深い魅力と定番人気メニュー
チュニジアの味覚を語るうえで外せないのが、国民的調味料である「ハリッサ(Harissa)」の存在です。赤唐辛子をベースに、ニンニク、コリアンダー、クミン、キャラウェイ、オリーブオイルなどをすり潰して作られるこのペーストは、2026年に単独でユネスコ無形文化遺産に登録されるほどの文化的アイコンとなっています。
単に辛いだけでなく、スパイスの芳醇なアロマとニンニクのコクが加わるため、料理全体の旨味を一気に底上げします。クスクスはもちろん、チュニジア料理の定番人気メニューの多くにこのハリッサが欠かせません。
春巻きのような薄い皮で半熟卵やツナ、ポテトを包んで揚げる「ブリック」、トマトとパプリカをスパイスで煮込んで卵を落とす「オジャ」、焼き野菜のペースト「サラダ・メチュイヤ」など、どの料理も日本人の味覚に驚くほど自然に馴染みます。