グランジ 系のムーブメントが、再び世界のストリートや音楽シーンの第一線へと躍り出ている。かつて90年代のシアトルで産声を上げた反骨のスタイルが、デジタル社会の疲弊とも呼ぶべき現代の空気感と共鳴し、全く新しい表情を見せ始めた。
東京・原宿のキャットストリートを行き交うZ世代の若者たちを見渡せば、オーバーサイズのダメージニットや色あせたネルシャツを纏う姿が目立つ。SNSのアルゴリズムに消費される画一的な流行へのアンチテーゼとして、粗野で自由なグランジ 系ファッションを自らのアイデンティティに組み込む動きが確実に広がっているのだ。
90年代ロックの破滅的美学から生まれた「グランジ」の根源
時計の針を30年以上巻き戻してみよう。1990年代初頭、アメリカ・シアトルのインディペンデントレーベル「サブ・ポップ」を中心に巻き起こった歪んだギターサウンドの荒波。それがグランジ・ロックだった。パンクロックの虚無感とヘヴィメタルの重厚さをブレンドした音像は、当時のオルタナティヴ・ロック全盛期の引き金となった。
その渦中で時代の顔となったのが、ニルヴァーナのフロントマンであったカート・コバーンだ。古着屋で買ったようなヨレヨレのモヘアカーディガン、破れたデニム、履き潰したスニーカー。ステージ上の彼が身にまとっていたのは、ハイブランドの洗練とは真逆の「日常の着古し」に過ぎなかった。しかし、その飾らない身なりこそが、当時の若者たちの居場所のない苛立ちと完璧に同期したのだった。
なぜ今、再ブレイク?独占取材で判明した2026年最新トレンドの法則
90年代ロックを発祥とするスタイルが、なぜ今これほどまでに世界的な再ブレイクを果たしているのか。原宿のアパレルショップを手掛けるトップバイヤーは独占取材にこう語る。「クリーンで計算し尽くされたファストファッションへの飽和感があります。整いすぎた装いに対する揺り戻しとして、不完全さや歪みを愛でるマインドが2026年の最前線に躍り出ました」
デジタルストリーミングの普及も後押しする。Spotifyのプレイリストでは90年代の名曲が世界中の若年層に再発見され、Netflixで配信されるアーカイブ映像やガス・ヴァン・サント監督の映画『ラストデイズ』に触発されたZ世代が、当時の空気をダイレクトに吸い込んでいる。単なる懐古趣味ではない。SNSで整えられた「魅せる自分」から抜け出し、生々しいリアリティを取り戻すためのコードとして、このスタイルが選ばれているのだ。