バイク バブという独特の愛称で半世紀近く愛され続ける絶版名車が、今かつてない狂熱の渦中にある。1970年代後半、本田技研工業(HONDA)が市場に投入した中型二輪「CB250T HAWK」および「CB400T HAWK II」。その丸みを帯びた特徴的なタンク造形と独特のツインサウンドから生まれた通称は、単なる懐古趣味の枠を遥かに超え、中古車市場で驚愕のプレミアム価格を叩き出している。
数ある昭和の名車の中でも、なぜこれほどまでにバイク バブが令和の若者や中年コレクターの心を捉えて離さないのか。その理由は単なるノスタルジーにとどまらない。日本の二輪車製造産業の激動期に生まれたメカニズムの秘密、世界的大ヒットアニメが巻き起こした社会現象、そして半世紀にわたり継承されてきた独自のストリートカルチャーが複雑に交錯する至極のドラマが存在するのだ。
なぜ「バブ」と呼ばれるのか?独特の排気音「バーブー」の秘密
愛称の由来は、エンジンが奏でる排気音そのものにある。空冷4ストロークSOHC3バルブ並列2気筒という、当時の技術を集約したエンジン設計。爆発間隔とマフラー構造が組み合わさることで、アクセルを戻した際や低回転域で「バー、ブー」とも「バブー」とも聞こえる独特の重低音が響き渡る。これがファンの間で定着し、「バブ」という唯一無二の呼び名が誕生した。
当時のミドルクラスといえば、高回転型の4気筒や鋭い加速を誇る2ストローク車が脚光を浴びていた時代だ。しかし、CB250T HAWKやCB400T HAWK IIは実用性と中低速トルクを重視。ショートストローク設計でありながら、どこか人間味のある不規則な排気音を生み出した。現在では騒音規制や環境基準の変化により、この官能的なツインサウンドを新車で再現することは不可能に近い。音そのものが、二度と手に入らない文化遺産としての価値を帯びているのだ。
『東京リベンジャーズ』佐野万次郎(マイキー)が火をつけた爆発的人気
近年の再ブームを決定づけた最大の引き金は、間違いなくアニメ『東京リベンジャーズ』の世界的ヒットだ。作中の最強キャラクターであり、暴走族「東京卍會」の総長・佐野万次郎(マイキー)の愛車として描かれたことが、若年層への決定的な訴求力となった。
ヤンキー・アクションジャンルという枠を超え、作品がNetflixなどを通じて世界中に配信されたことで、旧車に全く縁のなかったZ世代までもが「マイキーのバブ」に強烈な憧れを抱くようになった。劇中で描かれる排気音のリアルな描写や、仲間との絆を象徴するアイコンとしての演出は、単なる乗り物以上の神話性をCB250Tに与えたと言える。作中の憧憬がそのまま現実の購入意欲へと直結した事例は、近年のモーターサイクルシーンでも極めて異例だ。