毎日のバスタイムで耳にする「ピロリロリン、お風呂が沸きました」という軽やかで心地よいメロディ。日本全国の家庭で親しまれているノーリツ(NORITZ)の給湯器お湯はり完了音ですが、あの聞き覚えのあるピアノ曲の正式名称や作曲者を知っている人は意外と多くありません。
実はあのメロディは、世界中で愛されている有名なクラシックピアノ曲の一節です。なぜ数ある音楽の中からこの曲が選ばれたのか、アナウンスを担当している声優は誰なのか、そしてリンナイなど他社製品との違いや設定変更の裏技まで、気になる真相を一挙に紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:ノーリツ給湯器のお湯はり完了音はドイツの作曲家テオドール・エステンによる名曲『人形の夢と目覚め』(作品202-4)の第2部。
- 要点2:採用理由は「警告音で人を驚かせず、お風呂のリラックス感と安心感を届けるため」であり、聞き取りやすい音階と親しみやすさが決め手となった。
- 要点3:落ち着いた声のアナウンスは人気声優・講談師の一龍斎貞弥さんが担当しており、リモコン設定で音量調整やブザー音への切り替えも可能。
【曲名の正体】ノーリツの「お風呂が沸きました」は名曲『人形の夢と目覚め』
給湯器のリモコンから流れる優しく跳ねるようなピアノの音色。あの曲の正式タイトルは、ドイツの作曲家テオドール・エステン(Theodor Oesten)が手掛けた『人形の夢と目覚め』(Dolly's Dreaming and Awakening, Op.202-4)です。
ピアノを習った経験がある方なら、子供の頃の発表会や教則本で一度は弾いた記憶があるかもしれません。エステンは19世紀のロマン派時代に活躍した音楽家で、ピアノ教育者としても数多くの初心者向け名曲を残しました。日本では『アルプスの鐘』や『アルプスの夕映え』と並び、彼の代表作として広く親しまれています。
楽曲全体は3つのパートで構成されており、お風呂が沸いたときに流れるのは、眠っていた人形がパッと目を覚まして楽しげに踊り出す「第2部:人形の目覚め(Poco moto)」の冒頭フレーズです。跳ねるようなスタッカートと親しみやすいリズムが、お風呂の準備が整った合図として見事にマッチしています。
なぜこの曲?ノーリツ給湯器が『人形の夢と目覚め』を採用した誕生秘話
ノーリツが給湯器リモコンにメロディと音声ガイドを初搭載したのは1997年のことです。当時としては画期的な試みでしたが、そこには開発陣の細やかな配慮と強いこだわりが込められていました。
それまでの給湯器は「ピーッ」という無機質な電子ブザー音でお湯はり完了を知らせるのが一般的でした。しかし、突然鋭い警告音が鳴ると、ユーザーが「何かの故障か」「火事でも起きたのではないか」と不安やストレスを感じてしまうケースが少なくありませんでした。
そこで開発チームは、「家族がくつろぐ入浴の時間を、より優しく温かみのある音で知らせたい」と考え、数百曲におよぶクラシック曲や童謡を徹底的にリサーチ。その中から選ばれたのが『人形の夢と目覚め』でした。
選定の決め手となった理由は主に3点あります。
1つ目は、「日常の邪魔をせず、かつ耳に心地よく届く音響特性」です。住宅の壁やドアを隔ててリビングにいても聞き取りやすく、高音域の電子音特有の不快感がない周波数が選ばれました。
2つ目は、「誰もがどこかで聴いたことがある安心感」。ピアノ発表会の定番曲であるため、世代を問わず自然に生活空間へ溶け込みます。
そして3つ目が、「曲のストーリー性」です。眠りから心地よく目覚める人形の姿が、一日の疲れを癒やすお風呂の立ち上がりやリフレッシュの瞬間にぴったり重なったからでした。