不朽の名作『オズの魔法使い』において、主人公ドロシーの傍らに寄り添い、どんな過酷な旅路でも勇敢に駆け抜けた小さな相棒、愛犬トト。黒く愛らしい瞳とワイヤー状の被毛を持つあの姿は、映画史に刻まれたアイコンとして今なお世界中のファンを魅了し続けています。
しかし、トトのモデルとなった犬種やその性格、そして1939年の映画公開時に映画界を騒然とさせた「驚愕のギャラ事情」や過酷な撮影現場の裏側を知る人は決して多くありません。物語の核心を握るキーパーソンならぬ“キーパピー”としての役割から、歴史に埋もれた撮影秘話まで、トトにまつわる知られざる真実を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:トトの犬種はスコットランド原産の小型猟犬「ケアーン・テリア」であり、賢く勇敢な性格が物語と完全に合致。
- 要点2:トト役を演じた名優犬テリーの出演料は週給125ドルで、当時の多くの人間の共演者を上回る超高待遇だった。
- 要点3:エメラルドの都でオズ大王の正体を暴く決定打を放つなど、単なるペットを超えた物語最大の功労者である。
【犬種と特徴】ドロシーの愛犬トトの正体は「ケアーン・テリア」
映画『オズの魔法使い』でドロシーの腕に抱かれ、黄色いレンガの道を軽快に駆けていたトトの犬種は、ケアーン・テリア(Cairn Terrier)です。スコットランド西部のハイランド地方およびヘブリディーズ諸島原産の非常に古い犬種で、岩場(ケアン)に潜むキツネやネズミ、カワウソなどを狩る小型の使役猟犬として活躍してきました。
ケアーン・テリアの特徴は、天候に左右されない硬いダブルコートの被毛と、小柄ながら驚くほどがっしりとした骨格です。性格は「大きなハートを持つ小さな犬」と評されるほど勇敢でエネルギッシュ。独立心が強く賢い反面、家族に対しては深い愛情と忠誠心を見せます。ドロシーがピンチに陥った際、臆することなく魔女や怪鳥に立ち向かって吠え立てるトトの勇敢さは、まさにこの犬種本来の気質が色濃く反映されたものでした。
なお、L・フランク・ボームによる原作小説(1900年刊行)の初期イラストでは、トトは特定犬種として明言されておらず、長毛の小型テリア風の雑種に近い姿で描かれていました。しかし、1939年のMGM実写映画版においてケアーン・テリアが抜擢されたことで、「オズの魔法使いの犬=ケアーン・テリア」という世界的なパブリックイメージが決定づけられたのです。
【驚愕の出演料】人間の共演者超え?トト役「テリー」のギャラ事情
映画史における最大のトリビアのひとつが、トトを演じたタレント犬「テリー(Terry)」の出演料です。テリーは1933年生まれのメスのケアーン・テリアで、ハリウッド屈指のドッグトレーナーであったカール・スピッツ氏によって育てられました。
映画『オズの魔法使い』の撮影において、テリーに支払われたギャラは週給125ドル。当時のアメリカは世界恐慌の余波が残る時代であり、平均的なアメリカ人労働者の週給が20〜30ドル程度であったことを考えると、破格の超VIP待遇でした。
さらに驚くべきは、物語に登場する小人の国「マンチキン」の住人を演じた俳優たちの出演料が週給50ドル〜100ドル程度であったという記録です。つまり、トトは多くの人間の共演者よりも高い出演料を稼ぎ出していたことになります。ドロシー役のジュディ・ガーランド(当時週給約500ドル)ら主役級スターには及ばないものの、動物俳優としては前代未聞のギャラであり、映画製作陣がトトの演技力にどれほど重きを置いていたかを物語っています。