pho thin tokyoの店舗前に伸びる長蛇の列は、2026年の今や池袋や新宿の日常風景となった。ベトナム・ハノイの老舗名店「Pho Thin(フォーティン)」が海を渡り、初の海外店舗として日本に降り立ってから年月が経過した今も、その狂熱は衰える兆しを見せない。丼を覆い尽くす鮮やかな緑の青ネギ、強火でサッと炒められた牛肉、そして白濁した濃密な牛骨スープ。その一口は、従来の日本人が抱いていた「フォー=あっさりしたヘルシーなエスニック麺」という固定観念を豪快に打ち砕いた。
スープをすすれば、脂の香ばしさと牛の強烈な旨味が押し寄せる。日本のラーメン通すら唸らせるpho thin tokyoの圧倒的な存在感は、一体どこから生まれるのか。現地ハノイの頑固親父から秘伝の味を伝授された創業者の熱意と、東京の食文化が融合した最新の現場を追った。
ハノイの伝統と東京の熱量が交差する「ネギ爆盛り」スープの秘密
丼が運ばれてきた瞬間、目に入るのは見渡す限りの緑だ。麺もスープも見えない。
フォーティンの代名詞とも言えるのが、この大量のアサツキと強火で炒めた牛肉「フォー・ボー・タイ・ラン(Pho Bo Tai Lan)」のスタイルである。一般的なベトナムフォーが澄んだスープに生肉を載せるのに対し、ここではニンニクと共に豪快に炒めた牛肉をスープに投入する。油の旨味とネギのフレッシュな風味がスープに溶け出し、重厚でありながらも最後まで飲み干せる奇跡的なバランスを作り出している。
ラーメン激戦区・池袋で始まった一人の日本人の執念
物語の始まりは、創業者がハノイで出会った一杯の衝撃だった。
現地で「Pho Thin Lo Duc」を営む薄(ティン)氏の店は、地元住民と旅行者で連日ごった返す伝説の店。その味に惚れ込んだ創業者は、何度も渡航して弟子入りを直訴した。門外不出だった創業者の味を日本で再現する許可を得るまでの道のりは、平坦ではなかったという。スープの温度、火加減、肉の切り方。ミリ単位の調整を経て、池袋の小さな店舗から始まったストーリーが、いまや日本中にファンを広げている。