歌舞伎界のみならず、テレビ時代劇の世界でも絶大な存在感を放った名優・二代目中村又五郎。味わい深い至高の演技と温かみあふれる人柄は、没後年月を経た2026年の現在も多くのファンの記憶に鮮烈に焼き付いています。特に残された貴重な舞台写真やポートレートは、歌舞伎の神髄を今に伝える貴重な文化遺産として再注目されています。
初代中村吉右衛門の芸を忠実に受け継ぐ播磨屋の重鎮として、1997年には重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。さらに国民的時代劇『鬼平犯科帳』で見せた「さまさん」こと岸井左馬之助役の柔和な笑顔と鋭い太刀筋は、お茶の間の心を掴んで離しませんでした。伝説の名優が歩んだ94年の生涯と、語り継がれる名舞台の記録を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:若き日の精悍なポートレートから人間国宝に輝く舞台写真まで、類いまれな芸力と品格を徹底解説。
- 要点2:『鬼平犯科帳』の岸井左馬之助役で魅せた名演の舞台裏と、二代目中村吉右衛門との深き絆の真相。
- 要点3:播磨屋の血脈を受け継ぐ家系図と、息子・三代目中村又五郎や孫たちへと息づく伝統の継承。
【写真で巡る名優の足跡】二代目中村又五郎の若い頃から人間国宝への歩み
1914年(大正3年)に東京で生まれた二代目中村又五郎は、父である舞踊家の二代目花柳壽太郎の影響を受け、幼少期から舞台芸術の世界に身を投じました。大正から昭和初期にかけて撮影された若い頃の写真を眺めると、涼やかな目元と芯の強さを感じさせる端正な顔立ちが際立っています。
1921年に初代中村又五郎を襲名して初舞台を踏み、後に歌舞伎界の巨星・初代中村吉右衛門に入門。初代吉右衛門の薫陶を受けたことで、時代物から世話物まであらゆる役に命を吹き込む柔軟な演技力を身につけました。立役から女形、敵役から老役までをこなす「万能の名脇役」としての地位を確立し、主役を引き立てながら自らも深い陰影を醸し出す存在感は唯一無二でした。
長年にわたる歌舞伎界への貢献が評価され、1997年に人間国宝に認定。歌舞伎の伝統美を体現し続けたその経歴は、まさに昭和から平成の演劇史そのものです。
【鬼平犯科帳と岸井左馬之助】テレビ史に刻まれた「素顔」と吉右衛門との絆
歌舞伎ファンのみならず一般層にまでその名と顔を浸透させたのが、フジテレビ系列で放送された時代劇の金字塔『鬼平犯科帳』です。二代目中村吉右衛門が演じる主人公・長谷川平蔵の青年時代からの無二の親友である岸井左馬之助役を演じ、当たり役としました。
劇中で見せる、平蔵を包み込むような温かい眼差し、ひょうひょうとした立ち振る舞いの中に時折見せる剣豪としての鋭い眼光は、名優ならではの至芸でした。撮影現場で収められたスチール写真やオフショットでは、実生活でも甥にあたる吉右衛門と談笑する穏やかな素顔が残されており、役柄を超えた深い信頼関係が画面越しにも伝わってきます。
「さまさんが画面に現れるだけで、作品全体の空気が引き締まり、同時に温かくなる」と評された演技は、テレビドラマ史上に残る名演として今も語り継がれています。