飯田 市 龍江――天竜川が切り拓いた壮大な峡谷を眼下に望み、南アルプスを背景に広大な果樹園が佇むこの土地が今、大きな転換期を迎えている。長野県飯田市の南東部に位置する龍江地区は、古くから伊那谷の文化と物流が交差する豊かな風土に恵まれてきた。
リニア中央新幹線の長野県駅建設が進み、首都圏や中京圏との移動時間が劇的に縮小しようとしている2026年、ここ飯田 市 龍江へ寄せる関心は単なる観光地の枠を超え、新しい生き方を模索するクリエイターや次世代の農業経営者にまで急速に広がっている。
300年を受け継ぐ人形浄瑠璃「今田人形」に見る伝統と革新
龍江の文化的なバックボーンを語る上で欠かせないのが、江戸時代元禄期からこの地に根付く「今田人形(いまだにんぎょう)」だ。国の選択無形民俗文化財にも指定されているこの人形浄瑠璃は、太夫の語りと三味線の音色、そして3人が息を合わせて一遣いの人形を操る繊細な技によって支えられてきた。
少子高齢化が叫ばれる地方において、伝統芸能の継承はどこも至難の業だ。しかし今田人形座では、地元小中学校での体験授業や若手座員の積極的な登用を進め、伝統の骨組みを守りつつも新たな演目づくりに挑戦している。客席を埋める観光客や地域住民の熱気は、過去の遺物ではなく「今を生きる芸能」としての強靭な生命力を物語っている。
「そらさんぽ天竜峡」と天竜ライン下り――五感を刺激する渓谷美の新体験
天竜川の急流が削り出した国指定名勝「天竜峡」の南端に接する龍江地区は、圧倒的な景観美を誇る。なかでも三遠南信自動車道の天竜峡大橋に併設された歩行者専用道路「そらさんぽ天竜峡」からの眺望は圧巻だ。
足下に広がる深緑の渓谷と、川面を滑るように進む「天竜ライン下り」の船影。春の新緑、秋の紅葉、そして冬の静寂と、季節ごとに一変する表情が訪れる者の心を捉えて離さない。近年では、ただ景色を眺めるだけでなく、渓谷沿いの遊歩道を散策しながら地元の歴史伝承を聞き歩くガイドツアーも人気を集めている。