入社が決まり、浮かれるのも束の間。「最初の3カ月は試用期間です」と告げられ、給与が低く設定されていたり、いつ首を切られるか分からない不安を感じたことがある人も多いはずだ。あるいは、試用期間中に「本採用は見送り」と告げられ、路頭に迷ったケースも報道されている。試用期間とは一体何なのか。実は、その法的根拠や解雇の条件は世間一般の認識と大きくずれている。
厚生労働省の資料や労働契約法の規定を見ると、試用期間は「本採用の前に、企業が労働者の適性や能力を見極めるための猶予期間」と説明される。だが、その言葉を盾に、企業側が給与を一方的に下げたり、理由なく解雇できると信じているのは大きな誤解だ。本記事では、2026年現在の法解釈と最新の労使トラブル事例を基に、試用期間の本質とリスク回避の現実解を提示する。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:試用期間中であっても、労働基準法や労働契約法の解雇規制は原則としてフル適用され、無制限の解雇は認められない。
- 要点2:試用期間中の給与引き下げや社会保険未加入は法的にリスクが高く、2026年は是正の動きが加速している。
- 要点3:「試用期間=クビにしやすい」は誤解。本採用拒否には合理的理由と客観的証拠が必要で、違法なら争える。
試用期間の法的根拠と解雇ルール|労働基準法は本当に守ってくれないのか
まず大前提として、試用期間という制度そのものを直接定めた法律は存在しない。労働基準法に「試用期間」という条文はなく、民法と労働契約法の一般原則、そして判例の積み重ねによって運用されている。法律の専門家や労働問題に詳しい弁護士の解説を総合すると、試用期間中の労働者も「採用内定者」ではなく、すでに雇用契約を結んだ「労働者」として扱われる点が決定的に重要だ。
つまり、試用期間中であっても労働契約法第16条の「解雇権濫用法理」が適用される。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は無効になる。裁判例では、試用期間中の解雇は通常の本採用後よりも広い裁量が認められる傾向はあるものの、それでも「採用時に想定できなかった重大な問題が判明した」「指導を繰り返しても改善の見込みがない」といった具体的な根拠が求められる。
2026年から2026年にかけて、各地の労働局に寄せられた相談では「試用期間だから」という理由だけで解雇を通告されたケースが後を絶たない。ある東京都内の労働組合関係者は編集部の取材に対し、「試用期間を誤解している中小企業は想像以上に多い。期間満了間際に『やっぱり合わない』と口頭で切るのは、ほぼ確実に違法か違法に近い運用です」と証言する。
給与・社会保険・有給休暇の扱い|試用期間中に引かれる“見えない手数料”の実態
読者が最も気になるのが、試用期間中の給与と待遇だろう。結論から言えば、試用期間中であることだけを理由に最低賃金を下回る給与を設定することはできない。厚生労働省の通達でも、試用期間は労働時間や業務内容によって労働契約が成立している以上、最低賃金法の適用を免れることはないとされている。ただし、月給制の場合、本採用後と比べて「試用期間手当」として月額1万円~3万円程度低く設定する企業は実在する。
問題は、その差額が合理的かどうかだ。都道府県ごとの最低賃金と比較して違法ではないケースでも、「見習い」としての減額幅が大きすぎる場合、労働契約の内容として争う余地がある。2026年の全国加重平均の最低賃金は1050円を超え、東京都は1163円に達している。時給換算でこれを下回る試用期間給与は即アウトだ。
社会保険(健康保険・厚生年金保険・雇用保険)についても、試用期間だから加入させない、という企業の対応は明確な法律違反に当たる。フルタイム労働者であれば、試用期間の初日から被保険者資格が発生する。日本年金機構の公式見解でも、試用期間は保険加入の猶予事由にはならない。国民健康保険や国民年金に自分で加入させられる場合、事業主の手続き漏れか意図的な保険逃れを疑ってよい。
有給休暇も同様だ。労働基準法第39条に基づき、雇い入れから6カ月が経過し、その間の出勤率が8割以上であれば10日間の年次有給休暇が発生する。試用期間が3カ月なら、試用期間明けからさらに3カ月勤続すれば権利が生じる。試用期間中だから有給がない、という会社説明は法的根拠を欠く。