シンディ ローパー we are the worldの歴史的セッションから長い年月が流れたが、あの一夜の熱気は今なお色あせるどころか輝きを増している。1985年の1月、全米音楽界の頂点に立つアーティストたちが一堂に会したスタジオは、まさに奇跡の現場だった。
過密スケジュールの中、寝ずに駆けつけたスターたちの緊迫感が漂うなかで、シンディ ローパー we are the worldでのボーカルパート録音は見事な化学反応を引き起こした。その陰には、完璧主義がぶつかり合う凄まじいドラマと、現場を笑いと感動で包み込んだ予期せぬトラブルが存在した。
エゴを捨てた夜:スタジオの扉に掲げられた言葉
レコーディングが執り行われたロサンゼルスのA&Mスタジオ。入口のドアには、プロデューサーであるクインシー・ジョーンズの手によって「エゴは入口で預けて置け」という貼り紙が出されていた。グラミー賞授賞式直後の深夜、疲れ切った体で集まった45名のスターたち。プロジェクトの発起人であるライオネル・リッチーと楽曲を共同制作したマイケル・ジャクソンが中心となり、現場に明確なビジョンを提示していく。
そこにいた誰もが、各々チャートのトップを走る主役だった。しかし、その夜だけは違った。アフリカの飢餓に苦しむ人々を救うためのチャリティ・ソングという共通の目的のもと、ひとつの合唱団として堅く結束したのだ。80年代ポップスの黄金期を象徴する誰もが知る顔ぶれが、肩を並べて合唱する姿はまさに圧巻の一言だった。
マイクを揺らした謎のノイズ:アクセサリ事件の真相
ソロパートの録音中、音響エンジニアたちを困惑させる予期せぬトラブルが発生した。マイクを通したスピーカーから、シャリシャリという奇妙な金属音が聞こえ始めたのだ。何度テイクを重ねてもノイズが消えない。スタジオ内にピリッとした緊張感が走った。
原因を作っていたのは、まさにシンディ・ローパー自身だった。彼女が身につけていた大量の首飾りやイヤリング、チェーンが、歌うたびに首元でジャラジャラとぶつかり合っていたのだ。プロデューサーから指摘されると、彼女は照れ笑いを浮かべながら、その場で大量のアクセサリーを手際よく外し、スタジオの床へ放り投げた。その飾らない素顔と茶目っ気が、張り詰めていた現場の雰囲気を一瞬で和ませたのだった。