学校教育の現場で「主体的な学び」や「非認知能力の育成」が叫ばれる中、半世紀以上にわたって独自のカリキュラムを実践し、全国の教育関係者から熱い視線を浴び続けている公立校が存在します。長野県伊那市にある伊那市立伊那小学校です。
「チャイムが鳴らない」「数字による通知表がない」「クラスごとに羊やヤギなどの動物を育てる」――一般的な公立小学校の常識を覆すこの学校では、いったいどのような教育が営まれているのでしょうか。保護者からのリアルな口コミや卒業生の進路、移住を検討する家庭に向けた通学区域の最新事情まで、現地取材と関係者の声をもとにその真姿を紐解きます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:チャイムや数値評価の通知表を廃止し、子どもの内発的な探求心と自律性を引き出す独自教育を実践
- 要点2:1970年代から続く動物飼育と総合学習は、文部科学省のカリキュラム改訂にも多大な影響を与えた歴史的モデル
- 要点3:卒業生は高い自発性と問題解決力を発揮し、教育移住先としても全国的な人気と高評価を維持
【驚きの教育環境】チャイムも通知表もない公立校?その真相と日常のリアル
校内へ一歩足を踏み入れると、学校特有の「キーンコーンカーンコーン」という時報の音が一切聞こえないことに気づきます。伊那市立伊那小学校ではチャイムがない生活が徹底されており、児童は教室の時計や太陽の傾きを見ながら、自分たちで次の行動を判断します。休み時間の終わりも、仲間同士で声を掛け合いながら自然と教室へ戻っていく光景が日常です。
さらに多くの保護者を驚かせるのが、いわゆる「3段階評価」や「5段階評価」が並ぶ伊那市立伊那小学校の通知表の不在です。同校では数値による一律の成績判定を行わず、担任教師が一人ひとりの日々の気づき、総合学習での挑戦、心の葛藤と成長のプロセスを丁寧な文章で綴った「所見・個人記録」を手渡します。他者との相対比較ではなく、「その子が過去の自分からどう伸びたか」を多角的に見つめる姿勢が貫かれています。
【命と向き合う学び】ヤギやポニーの動物飼育が育む非認知能力と人間性
同校の代名詞とも言えるのが、伊那市立伊那小学校の動物飼育を中心とした実践です。入学した児童たちは、1年生から学級単位で「何を飼うか」「どのような小屋を作るか」を徹底的に話し合います。ヤギ、ヒツジ、ポニー、チャボ、豚など、育てる生き物はクラスごとに異なり、教師は答えを与えず伴走役に徹します。
生き物を育てる過程では、楽しいことばかりではありません。動物の病気や排泄物の処理、週末の当番決め、時には避けて通れない「死」との直面など、数々の困難が子どもたちに降りかかります。こうしたリアルな体験を仲間と協働して乗り越えることで、教科書では学べない自己管理力、共感力、粘り強さといった教育方針の根幹をなす特徴が、日々の生活の中で自然と養われていきます。