お茶の間を席巻したau三太郎シリーズのテレビCMから誕生し、日本中に強烈な前向きのエネルギーを届けたWANIMAの代表曲『やってみよう』。2026年の現在でも、入学式や運動会、新社会人の門出を祝う応援ソングの金字塔として幅広い世代に歌い継がれています。
誰もが幼少期に親しんだ童謡のメロディをベースにしながら、なぜこれほどまでに人々の心を鼓舞し、背中を押し続けるのか。その背景には、緻密に計算された制作背景と、現代人の深層心理に突き刺さる言葉の力がありました。本稿では、楽曲のルーツから歌詞の深層分析、歴代CMソングとの比較までを徹底取材に基づいて解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】- 要点1:原曲はイギリス民謡・童謡『ピクニック』であり、CMクリエイター篠原誠氏の作詞とWANIMAの疾走感あふれるロックアレンジが見事に融合した名曲。
- 要点2:「正しいより 楽しい」「倒れるなら前へ倒れよう」など、失敗を恐れる心理的ブレーキを解除する歌詞が圧倒的な共感を生んでいる。
- 要点3:教育現場でのひらがな歌詞需要やギター初心者向けのコード進行、フル配信への熱望など、多面的な広がりを持つ国民的応援ソング。
【原曲の秘密】童謡『ピクニック』がWANIMAのロック応援歌に生まれ変わった経緯
『やってみよう』の親しみやすさとキャッチーさの根源は、そのメロディのルーツにあります。原曲となっているのは、広く知られるイギリス民謡、そして日本では「丘を越え 行こうよ 口笛吹きつつ」の歌い出しでおなじみの童謡『ピクニック』です。
auの「三太郎シリーズ」CMソングは、日本の昔話の登場人物たちが織りなすユニークな世界観に合わせ、パブリックドメインの伝統的な楽曲を斬新に再解釈する手法で数々の大ヒットを生み出してきました。浦島太郎(桐谷健太)の『海の声』や、AIが歌った『みんながみんな英雄』(原曲:オクラホマミキサー)に続くプロジェクトとして白羽の矢が立ったのが、当時インディーズからメジャーへと駆け上がっていたスリーピースロックバンド・WANIMAでした。
原曲ののどかなカントリー調のリズムを、BPMの速いメロディックパンクへと大胆にリアレンジ。KENTA(Vo/Ba)の突き抜けるハイトーンボイスと力強いスリーピースサウンドが加わったことで、原曲の持つ朗らかさを損なうことなく、聴く者のアドレナリンを沸騰させるパワフルなロックチューンへと昇華されたのです。
【歌詞の意味・解釈】「正しいより楽しい」に込められた現代へのメッセージ
本作の作詞を手がけたのは、au三太郎シリーズの生みの親であり、数々のヒット広告を手がけてきたクリエイティブディレクターの篠原誠氏です。CMのために書き下ろされた歌詞には、失敗を恐れて委縮しがちな現代社会を生きる人々への、実践的かつ温かい人間賛歌が凝縮されています。
特にリスナーの心を掴んで離さないのが、「正しいより 楽しい 正しいことばかり言ってちゃ つまらない」というフレーズです。情報過多で他者の視線やコンプライアンスが過度に意識される現代において、「正しさ」という枠組みに囚われて身動きが取れなくなる心理状態を、見事に解きほぐす力を持っています。
心理学における「失敗回避動機(失敗を避けることを最優先する心理)」から「達成動機(挑戦すること自体の喜び)」へのパラダイムシフトを促す言葉が、楽曲の随所に散りばめられています。
- 「失敗も思い出」:挫折やミスを人生のマイナスではなく、後から振り返れば愛おしい人生の彩りとして全肯定する視点。
- 「倒れるなら 前へ倒れよう」:後退や停滞を選ぶのではなく、挑戦した結果としての失敗を受け入れ、一歩でも先へ進もうとする前傾姿勢の美学。
- 「やってみよう」の反復:理屈や計算よりも先に行動を起こすことの大切さを、耳に残るリズムで刷り込むアファメーション効果。
これらの歌詞がWANIMAの泥臭くも圧倒的にポジティブなキャラクターと融合したことで、説教臭さを一切感じさせない、純粋なエネルギーの塊として届く構造になっています。