ワンピース ヒグマという男を、単なる序盤の雑魚キャラクターと切り捨てることはもはやできない。
集英社が誇る『週刊少年ジャンプ』で1997年に連載がスタートして以来、世界的な現象となった『ONE PIECE』。その記念すべき第1話において、東映アニメーションの映像でもおなじみのフーシャ村を恐怖に落とし入れた山賊の頭領、それがワンピース ヒグマだ。物語がクライマックスへと突き進む中で、彼の残した言動や存在意義が改めて読者の間で異様な熱量を帯びて再評価されている。
第1話の衝撃:フーシャ村で赤髪のシャンクスを挑発した男
今や世界の海を統べる四皇の一角として君臨する赤髪のシャンクス。懸賞金40億4890万ベルを誇る大海賊に対し、頭から酒を浴びせ、拳銃を突きつけた男がいた。懸賞金わずか800万ベルの山賊ヒグマである。
平和なフーシャ村の酒場を訪れたヒグマは、酒が切れていることに腹を立て、シャンクスを容赦なく侮辱した。シャンクスが笑顔でそれを受け流した姿は、初期のルフィにとって「強さとは何か」を学ぶ決定的な教訓となった。だが、物語が進むにつれてファンは疑問を抱く。覇気や圧倒的な実力を持つシャンクスが、なぜ一介の山賊の非礼を黙って受け入れたのか。そして、なぜヒグマはあれほどまでに物怖じせず、最高峰の海賊に牙を剥くことができたのだろうか。
「俺のように図に乗った奴を56人殺した」発言に隠された伏線
ヒグマのセリフの中で、最もファンの好奇心を刺激し続けているのが「俺のように図に乗った奴を56人殺した」という豪語だ。当時は単なる悪役の虚勢として読み流されていた。しかし、作中で数字の語呂合わせや厳密な伏線回収を仕掛ける尾田栄一郎の執筆スタイルを考えれば、この「56」という数値に特別な意味が込められているのではないかという議論が絶えない。
「56」という数字は、作中で「ゴム(56)」の語呂合わせとして多用される象徴的な数値でもある。ルフィのゴムゴムの実(太陽の神ニカ)との奇妙な数字の符合や、グランドラインで過去に倒してきた強者たちの数ではないかという説まで、様々な推察が飛び交う。単なる山賊の放言なのか、それとも世界政府や大海原の深淵を知る者の暗示だったのか。その真相は、作品のスケールが広がるほどに深みを増している。