西垣匠 ブルーロックの舞台初演において、彼が客席に与えた衝撃は今なお鮮烈だ。人気サッカー漫画の舞台化という高いハードル、とりわけトリッキーで天真爛漫な蜂楽廻(ばちら めぐる)という難役の再現は至難の業とされていた。だが、幕が上がると同時に舞台上を縦横無尽に舞ったのは、原作から抜け出してきたかのような「本物のエゴイスト」だった。
フェンシング日本代表候補という異色の経歴で培われた身体能力をフルに活かし、ボールのない舞台上で圧倒的な存在感を放った彼のアクション。多くの劇評家やファンの間でも、西垣匠 ブルーロックのタッグが若手俳優・西垣匠の潜んでいた才能を爆発させた決定的な瞬間であったことに異論を挟む者はいない。
原作ファンを狂喜させた「狂気と無邪気」の黄金比
蜂楽廻という存在は、単なる可愛らしいムードメーカーにとどまらない。その内側には、常人には理解しがたいフットボールへの執着と、自分だけの「怪物」を追う孤独なエゴが渦巻いている。西垣はこの複雑な二面性を、目線の鋭さ一つ、呼吸の乱れ一つで完璧に表現してみせた。
舞台のスピード感に流されることなく、己の間の取り方で空間を支配する圧倒的な演技力。「見えないドリブル」に説得力を与えたのは、彼の高い集中力と骨太な表現者としての自我に他ならない。
フェンシング全国覇者の身体性がもたらした奇跡のフットワーク
高校時代にフェンシングで全国トップクラスの実績を残した西垣の体躯は、舞台上での鋭いフットワークに遺憾なく発揮された。低い重心、瞬発的な間合いの詰め方、そして体幹のぶれなさ。これらは一朝一夕のレッスンで身につく質のものではない。
ピッチに見立てた舞台の上で、相手役の動きに超人的な反応を見せる殺陣の精度は、スポーツ漫画の舞台化における新たな到達点を示していた。