セッション 映画の枠を超えた衝撃作として、公開から歳月が流れた今もなお世界中の映画ファンを惹きつけてやまない。名門音楽学院を舞台に、伝説のジャズドラマーを夢見る青年と、完璧を求めて異常なまでのスパルタ指導を行う鬼教師。スクリーンの向こうから血と汗、そして怒号が直接響いてくるような圧倒的な緊迫感が、観る者の息根を止める。
世界中で大ヒットを記録し絶賛されたセッション 映画の真価は、王道の成長物語をあっさりと裏切り、人間の執着と狂気の深淵を描き切った点にある。芸術の高みへ到達するためには魂すら差し出すべきなのか。一瞬の妥協も許されない極限状態の中で、物語は容赦なく加速していく。
過酷なジャズドラムの世界を描く熱狂と戦慄の心理サスペンス
本作を一言で表現するなら、従来の音楽映画の概念を根底から覆す異色の心理サスペンスだ。過酷なジャズドラムの練習風景は、まるで命を削り合う格闘技のリングそのもの。スティックを握る手から血が吹き出し、シンバルが赤く染まっても、主人公アンドリューの打球音は止まらない。
わずかなテンポのズレすら許さず、パイプ椅子を投げつけ、人格を徹底的に否定する鬼教師フレッチャー。彼の指導は指導という名の暴力であり、精神的拷問に等しい。しかし、その恐怖政治の裏にあるのは、常人には理解しがたい「偉大さ」への異常な飢えだ。この二人の異常な執着がぶつかり合うことで、作品全体に息詰まる緊張感が漂い続ける。
マイルズ・テラーとJ・K・シモンズが生み出した至高の化学反応
若き天才アンドリューを体当たりで演じたマイルズ・テラーは、実際に劇中のドラム演奏の大部分を自身でこなし、狂気に取りつかれていく青年の苦悩と変貌を生々しく体現した。対する鬼教師フレッチャー役のJ・K・シモンズが見せた怪演は、映画史に刻まれるほどの圧巻の存在感である。
冷徹な眼光と容赦ない暴言で若者を追いつめるシモンズの迫真の演技は、第87回アカデミー賞で助演男優賞を受賞。インディペンデント映画としてスタートし、ソニー・ピクチャーズ クラシックスの配給によって世界中で旋風を巻き起こした本作は、演技派ふたりの魂のぶつかり合いによって傑作へと昇華した。