bis 全裸という衝撃的な言葉がカルチャー界隈を駆け巡ったあの夏、日本の音楽シーンに不可逆な地殻変動が起きた。2011年にリリースされたインディーズシングル曲のプロモーションビデオで見せた決死のパフォーマンス。彼女たちが選んだ表現手段は、美しく整えられたアイドルの枠組みを自ら破壊し、裸一貫で牙を剥くことだった。ネットを中心に広がった波紋は、単なる炎上騒動にとどまらず、エンターテインメントのあり方に問いを投げかける事件へと発展していく。
清純さや愛らしさが絶対的な美徳とされていた当時のアイドル市場において、bis 全裸という過激極まるアプローチは異例中の異例だった。地下ライブハウスの熱気から始まり、瞬く間に全国規模の話題へと上りつめた背景には何があったのか。表現の限界を拡張しようとした少女たちと、彼女たちを突き動かした大人たちの野望。その舞台裏と仕掛けられた戦略を多角的な視点から浮き彫りにしていく。
衝撃作『My Ixxx』が切り拓いたオルタナティヴ・ロックの地平
BiS(Brand-new idol Society)が放った問題作『My Ixxx』のPVは、公開直後から爆発的な再生数を記録した。動画共有プラットフォームのYouTubeを通じて世界中へと瞬く間に拡散された映像は、モザイクによる自主規制処理が施されていたものの、メンバーが全裸で森の中を疾走するという前代未聞の映像だった。当時のJ-POPシーンでは、キラキラとした衣装を着た女性アイドルグループがチャートを席巻していたが、BiSは激しいオルタナティヴ・ロックのサウンドに乗せて、剥ぎ取られた素の肉体を提示したのだ。
所属レーベルであったつばさレコーズにとっても、この試みは一か八かの賭けだった。既存の音楽メディアが取り上げづらい過激な内容でありながら、SNSの口コミ効果によって中毒的なファンを獲得。従来の枠組みに収まらない異端の存在として、その名を音楽ファンへ強く刻み込むことに成功したのである。
プロデューサー渡辺淳之介とプー・ルイが挑んだ「反逆」の全貌
この常識破りの戦略を推し進めた中心人物こそ、当時つばさレコーズのマネージャーであり、のちに音楽事務所WACKを設立するプロデューサーの渡辺淳之介だ。そしてグループのリーダーであり、中心人物として陣頭指揮を執っていたのがプー・ルイである。二人が目指したのは、既存のシステムに対するアンチテーゼであり、自立した表現者としてのアイドルの姿だった。
「普通にやっても誰の目にも留まらない」という強烈な危機感が、彼女たちを全裸撮影という極限の表現へと向かわせた。渡辺の仕掛ける破天荒なプロモーションと、それに泥臭く食らいつくプー・ルイらの覚悟が合致した時、カルチャーとしてのBiSが覚醒した。単なる性的な挑発ではなく、ポップミュージックへの宣戦布告としてあの映像は機能していたのである。