新宿 スンガリーは、創業から半世紀以上の歴史を誇るロシア・東欧料理の老舗として、今日も東京のグルメシーンの最前線に燦然と輝いている。激変する新宿の街並みの中で、地下へと続く階段を降りた瞬間に広がる温かみのある木目調のインテリアと、じっくり煮込まれたボルシチの芳醇な香りは、訪れる者の心を一瞬で掴んで離さない。流行の移り変わりが激しい2026年の東京にあっても、その揺るぎない味覚と異国情緒あふれる佇まいは、世代を超えた多くのファンを惹きつけて止まない。
かつてシンガーソングライターの加藤登紀子氏の父・加藤幸四郎氏によって創業された歴史的背景を持つこの店は、単なるレストランの枠を超えた文化的価値を有している。夜の帳が下りる頃、新宿 スンガリーのテーブルに運ばれる熱々のピロシキや自家製つぼ焼きは、日常の喧騒を忘れさせる特別な食体験へと客をいざなう。伝統を守り抜きながらも常に時代の息吹を取り入れる柔軟さこそが、長年にわたり圧倒的な支持を集める最大の理由だ。
70年の歴史を紡ぐ伝統と加藤家の物語:昭和から2026年へ繋ぐ真髄
1957年の創業以来、この店が歩んできた道のりは、日本の西洋料理史そのものと言っても過言ではない。旧満州・ハルビンから引き揚げてきた創業者・加藤幸四郎氏が「本物のロシア家庭料理を日本の人々に届けたい」という情熱から立ち上げた小さなレストランは、やがて娘である加藤登紀子氏をはじめとする文化人やアーティストたちが夜な夜な集う特別なサロンへと成長していった。
2026年を迎えた現在も、そのスピリットは色あせることなく引き継がれている。クラシカルな調度品や壁に飾られたロシア工芸品「ホフロマ塗り」の温もりが、訪れる人々に昭和の浪漫と優雅な時の流れを感じさせる。半世紀以上の時を経てもなお、創業当時の想いとレシピが大切に守られているからこそ、親子三世代で通い続ける熱狂的なファンが後を絶たないのだ。
深みある鮮赤のスープ「ボルシチ」と黄金色に輝く「ピロシキ」の極致
看板メニューであるボルシチは、まさに時間をかけて仕込まれた芸術品だ。ビーツの鮮やかな深紅のスープには、牛すじやフレッシュな野菜の旨味が凝縮されており、一口含んだ瞬間に豊かなコクが口いっぱいに広がる。添えられたサワークリーム(スメタナ)を溶かせば、爽やかな酸味とまろやかさが加わり、スープ全体の味わいが劇的な変化を遂げる。
そしてボルシチと並び称されるのが、黄金色に揚げられた焼き立てのピロシキだ。外側はサクッと香ばしく、中はモチモチとした生地の中から、ジューシーな肉汁と絶妙なスパイスが香る具材が溢れ出す。揚げる油の温度から生地の発酵時間にいたるまで、職人の長年の勘と技術が凝縮された逸品であり、一度味わえばその違いは歴然である。