「最も美しく、最も哀しい貞子」から27年――木村多江が今明かす『リング』撮影秘話と、令和に蘇るJホラーの原点
木村 多 江 貞子という希代のコラボレーションが、四半世紀の時を超えて再び脚光を浴びている。1990年代後半、日本中を恐怖のどん底に陥れたJホラーの金字塔『リング』シリーズ。そのテレビドラマ版で怨霊・貞子(山村貞子)の生前と死後を演じ分けた彼女の圧倒的な演技力は、今なおホラーファンの間で語り草だ。2026年現在、世界的なJホラー再評価の波が押し寄せる中、彼女が体現した「悲劇のヒロインとしての貞子」に改めて注目が集まっている。
近年のホラー映画におけるキャラクターは、過激なスラッシャー描写や派手なCGIに頼りがちだ。しかし、薄幸な美しさと心の奥底に潜む狂気を静かに表現した木村 多 江 貞子の存在感は、そうした現代の演出とは一線を画している。彼女が演じた貞子は、単なる記号的なモンスターではなく、社会の理不尽さに翻弄された一人の女性としての哀哀に満ちていた。
2026年の今、なぜ「薄幸の女王」の原点が再評価されるのか
動画配信サービスの普及により、90年代の名作ドラマが国内外で手軽に視聴できるようになった。デジタルリマスター版の配信が開始されるやいなや、SNS上では「木村多江の貞子が怖すぎる」「美しすぎて目が離せない」といった若い世代からの投稿が急増。単なる懐古趣味にとどまらない、新たなムーブメントが巻き起こっている。
当時を知る映画ライターは語る。「映画版の貞子は顔が見えない恐怖の象徴でしたが、木村さんが演じたテレビ版の貞子は、その素顔の美しさと、そこから生み出される狂気のギャップが凄まじかった。このコントラストこそが、現代の視聴者にとって新鮮に映るのでしょう」。
テレビ版『リング』で見せた、映画版とは異なる「人間味」
1999年にフジテレビ系で放送された『リング〜最終章〜』および『らせん』。ここで描かれた貞子は、原作小説が持つSF要素や人間ドラマに深く踏み込んだ内容だった。映画版が提示した「テレビから這い出る異形の化け物」というイメージに対し、テレビ版は彼女がなぜ怨霊にならざるを得なかったのかというプロセスに焦点を当てている。
木村多江は、超能力を持ちながらも普通の幸せを望んでいた山村貞子の「陽」の部分と、裏切られ世界を呪うようになった「陰」の部分を見事に演じ分けた。視聴者は彼女の恐怖に怯えながらも、同時にその境遇に深く同情せざるを得なかったのだ。