スモーキーな香りに世界が熱狂!京都「いり番茶」の知られざる秘密

スモーキーな香りに世界が熱狂!京都「いり番茶」の知られざる秘密

いり 番茶の独特な煙香が漂う古都の路地に足を踏み入れると、まるで焚き火の傍らに立っているかのような錯覚に包まれる。燻製を思わせるインパクト抜群の香りと、枯れ葉そのもののように無骨なビジュアル。一般的な煎茶や玉露のイメージからは遠く離れたこの茶は、初めて触れる者を間違いなく驚かせる。だが一口含むと、煙の奥からさっぱりとした澄んだ甘みが現れ、喉をすっと通り抜けていく。

京都の町家で古くから日常の水分補給として愛されてきたいり 番茶だが、分類としては緑茶・焙煎茶の系譜を引きつつも、その製法は独自の進化を遂げている。茶葉を摘み取った後に揉み込む工程を一切挟まず、高温の蒸気で蒸してから干し、最後は大鍋で焦げる寸前まで一気に炒り上げる。豪快さと繊細な火加減の調整が同居する作業は、長年培われてきた日本伝統食文化の深遠さを力強く物語っている。

職人が明かす燻香の秘密:炒り工程が生むスモーキーな風味

なぜこれほどまでに薪のような芳ばしい香味が生まれるのか。答えは、茶葉を揉まずにそのまま大鍋で炒るという泥臭くも合理的な製法にある。

使われるのは春の柔らかい新芽ではなく、秋から冬にかけてたくましく育った秋番茶や冬番茶の枝葉だ。厚く育った葉と枝は水分を内側に抱え込んでおり、揉まずに乾燥させることで旨味を閉じ込める。それを鉄板の上で焦げる手前まで高温加熱することで、葉の表面が一気に燻され、力強いスモーキーな香気が生まれるのだ。熱気と煙が立ち込める現場で「焦がすのではなく、香りを引き出す塩梅がすべて」と職人は語る。長年の勘と身体感覚だけが頼りの技が、唯一無二の深い味わいを支えている。

カフェイン控えめで夜も安心?日常に溶け込むカラダへの優しさ

力強い見た目と強烈な香りとは裏腹に、体に残る優しさもこのお茶が長く愛される理由だ。

しっかり育った成熟葉や茎を使い、さらに高温でじっくり焙煎するため、カフェインやタンニンなどの刺激成分が大幅に飛ぶ。胃に優しく喉越しが軽やかなため、子どもからお年寄りまで安心して飲める普段着のお茶として重宝されてきた。夜の就寝前に温かい一杯を飲んでも睡眠を妨げない点は、ストレスの多い時代において大きな強みだ。健康意識の高まりとともに、日常の定番ドリンクとして見直されている。

中川 明日香
Penulis

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。